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よむとす No.376 自分の道を歩む人

[2026年10月15日]

ID:1275

自分の道を歩む人

中央図書館 瀧本 明子

誰かの体験や物語を読むことで、自分の世界が広がったり、ものの捉え方が変わったり、深く考えるきっかけになったりすることがあります。夜が長くなってきました。日頃忙しくしている方も、読書からしばらく遠ざかっている方も、ちょっと本を手に取ってみませんか。

『この身体で生きていく 自分の道を歩む人』

自分の身体や心の声と向き合って歩んできた50人の生き方が紹介されているノンフィクションです。
こどもの時に不発弾の爆発事故で両手と視力を失った男性は、18歳の時、ある本と出合って自分で本を読みたくなり、必死に訓練して唇で点字を読むようになります。人をマッサージしたことをきっかけに他人と楽に話ができるようになったという美術家は、マッサージした感覚を頼りに、“体の凝り”を絵や塑像に表現するようになりました。“女の子らしさ”という固定観念をぶっ壊したいと思っていた少女は、女装願望のある男性の希望を叶えるメーキャップアーティストになりました。
消防士からデザイナーへ転身した人、夫から肝移植を受けた人、ほかにも多くの軌跡が紹介されていますが、心を動かされたきっかけがある人もいれば、やっているうちにその道が染みついてきた人、否応なく歩まされた人もいて、途中で行く道を曲がってもいいし、いったん止まることがあってもいい、その人その人の生き方があるんだということを感じさせてくれる1冊です。

『宇野千代 そして、生きて行く私』

『宇野千代 そして、生きて行く私』(別ウインドウで開く)
別冊太陽 日本のこころ335  平凡社 2026年9月

宇野千代自身、『私何だか死なないような気がするんですよ』(別ウインドウで開く)という本を書いていますが、私の中の宇野千代のイメージは、今でも「あれ、もう亡くなったんだっけ?」と言ってもおかしくない、現代を生きている人、というものです。明治30年に生まれた人と知ったときは驚き、興味が湧いて、『生きて行く私』(別ウインドウで開く)を読んだことを思い出しました。
作家、雑誌の編集者、着物のデザイナー、何人もの男性と結婚し別れ、10軒以上の家を建て…、著書『行動することが生きることである』(別ウインドウで開く)を体現してきた人といえるでしょう。
この本では、写真も数多く載せて、宇野千代の波乱に満ちた人生をたどりながらその言葉や作品を紹介しています。NHK連続テレビ小説「ブラッサム」をみて実際の宇野千代はどんな女性だったのだろうと気になる方はぜひ手に取ってみてください。
後半に収録されている秘書の「あっちゃんが語る普段着の先生」や「もっと知りたい千代語録」には、千代らしいエピソードや大切にしていたこと、恋愛についての考えなどが書かれています。あっちゃんが朝「おはようございます。ご気分はいかがですか?」と挨拶すると、どんなときでも必ず「最高ですよ」と返ってきたそうです。「お洒落しないのは泥棒よりひどい」「自分を褒めてくれる人のそばに寄りなさい」「何か辛いと思うことがあると、それをとんでもない愉しいことのように思い替える」などなど、人の「幸せ」とは何であるかを考えさせてくれます。

『みにくいシュレック』

『みにくいシュレック』(別ウインドウで開く)
ウィリアム・スタイグ/作 おがわ えつこ/訳 セーラー出版 1991年3月

この絵本は、ふつうの絵本とちょっと違います。まず表紙。なんだか気味の悪いばけもののような生きものがこちらをにらんでいます。主人公はシュレック。よちよち歩きの時にはもう口から炎を飛ばし、耳から煙を吹き出し、かみついたヘビはひきつけを起こして死にました。両親に蹴飛ばされて旅に出たシュレックは、木がのけぞってよけるのを見てうれしくなり、魔女におかしな予言をされても進んでいきます。
この絵本を最初に手に取った時には、実は心が優しいとか、最後に美しくなるとかなのかな?と読み始めましたが、そういうことは一切ありません。書いてはないのに、人が自分を怖がるのを見て、ほくほくしながら歩いているのがわかります。周りの態度は全く気にすることなく、自分に誇りをもってわが道を行く姿はすがすがしく、そのぶれない姿勢に魅了されてしまいます。
ウィリアム・スタイグは、『ロバのシルベスターとまほうの小石』(別ウインドウで開く)『歯いしゃのチューせんせい』(別ウインドウで開く)『ゆうかんなアイリーン』(別ウインドウで開く)など、ちょっとスパイスをきかせたユーモアにあふれた絵本や、ハラハラドキドキして愉快でありながら心がほんわかする絵本を数多く作っています。
どの本からも、人を見る目のあたたかさを感じます。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。