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よむとす No.375 暮らしに寄り添う科学の魔法

[2026年10月1日]

ID:1273

暮らしに寄り添う科学の魔法

中央図書館 森山 ゆり
 
月が綺麗に見える季節になりました。今、世界中の宇宙機関が、その「月の時間」を決めようと動き出しているのをご存知ですか?
重力が地球より弱い月の上では、地球よりも毎日ほんのわずかだけ時間の進みが早く、これから人類が月面基地を作りそこで生活していくには、月専用の時計が必要なのだそうです。
今回は、そんな科学の不思議や魅力が詰まった3冊を紹介します。

『月まで三キロ』

『月まで三キロ』(別ウインドウで開く)
伊与原 新/著 新潮社 2018年12月

理学博士でもある著者による短編集です。さまざまな悩みを抱え人生に行き詰った人々の心をそっとほぐすあたたかい物語が6編収録されています。どの物語にも興味深い科学の要素がちりばめられていますが、今回はその中から表題作『月まで三キロ』を紹介します。
ある重い決意を胸に秘めて夜のタクシーへ乗り込んだ一人の男が主人公です。事業の失敗や離婚、そして家族の介護。相次ぐ試練に疲れ果て、全てを投げ出してしまいたいほどのどん底にいた男が偶然拾ったのがこのタクシーでした。
どこか謎めいた運転手に、
「この先にね、月に一番近い場所があるんですよ。」
と告げられ、行先もはっきりしないまま、暗闇の山道を車は進んでいきます。その運転手はやたらと天文の知識に詳しく、月が常に同じ面しか見せない理由や、地球との距離に隠された驚きの事実などを静かに語り出します。そしてたどり着いた場所は・・・。
その場所の、ある意外な真実と、運転手の思いがけない過去に触れ、絶望の淵にいた男の心がじんわりと解きほぐされていきます。傷ついた心にそっと寄り添い、再び前を向いて歩きだす力をくれる、せつなくも深く胸を打つ物語です。
読み終えた後、いつも見上げていた夜空の月がほんの少し違って見えるかもしれません。

『銀河の片隅で科学夜話』

『銀河の片隅で科学夜話』(別ウインドウで開く)
全 卓樹/著 朝日出版社 2020年2月

もし、一日の長さが毎年少しずつ伸びていると言われたら信じられますか?
この世界の不思議な真実を、美しい物語のように解き明かしてくれる科学エッセイです。
第一夜『海辺の永遠』で語られるのは、実は地球の一日の長さは潮の満ち引きによる摩擦の影響で、一年に0.000017秒ずつ長くなっているという話です。ほんの一瞬のようでいて、地球の長い歴史で見ると大きな変化です。恐竜が生きていた約一億年前、一日は約二十三時間でした。更に500億年経つと一日の長さは今の約一ヶ月分にまで伸びてしまうといいます。
本書は五つの章に分かれており、好きな章から楽しめます。この世界の不思議な謎解きを楽しむようにページをめくってみてください。

『わらって、考える!イグ・ノーベル賞ずかん』

『わらって、考える!イグ・ノーベル賞ずかん』(別ウインドウで開く)
古澤 輝由/監修 萩原 慶/絵 ほるぷ出版 2024年12月

イグ・ノーベル賞とは、「人々を思わず笑わせて、そして考えさせた研究や業績」にあたえられる世界的な賞です。今年も「正しい鼻のかみ方」を空気力学的に検証した日本の研究が医学賞を受賞し、日本人研究者の受賞が20年連続に達しました。本書には一見するとこっけいで奇妙に見えるけれど、中身は100%本物の筋の通った科学実験が多数紹介されています。みんなで科学を楽しみ、その発展を祝い、そして全力でおふざけをするお祭りとなっています。
今まで受賞した中には、「バナナの皮は本当に滑りやすいのか」「9年に一度ポトリと落ちる雫を1927年から今までずっと観察し続けている」など、いったいなんのため?というような研究もあります。ですが、それが思わぬ発見となって科学の発展につながることもあるのです。
写真やイラストがたっぷりの児童向けの本ですが、実験の背景にある科学的な仕組みや科学者たちの情熱の深さが垣間見え、大人が読んでも楽しめる本です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。