中央図書館 矢澤 恵
世界は不思議に満ちている。知りたいことはたくさんあるのに、時間は有限だし、難しい本はちっとも理解ができないし、そもそも解明されていない不思議が多すぎる。
でも、ピラミッドの石をひとつひとつ積むように、その謎に綿々と取り組んでいる人たちがいるのです。
中学生のころ、社会で「石油はあと40年」と習いました。そして理科の先生は「石油は、数億〜数千万年前の海底や湖底に沈んだ生物の死骸」といいました。え?ちょっと待って。数億年前から現在に至るまで、生物の死骸は海底に積もり続けているのに、どうして石油は有限なの?
山歩きをするようになって、山の成り立ちが気になり始めました。例えば南アルプスは、海の底の地層がプレートに押されて激しく盛り上がってできた山脈とのことです。でも、地質とか岩石とかを調べるだけで、その地がはるか遠い海の底から動いてきて盛り上がったりねじれたり削られたり曲がったり、しかもそれがいつ起こったのかまでわかるのはなぜ?
そんな地球の成り立ちを教えてくれる本です。不思議を解き明かしてくれるのももちろんですが、どうやってそれが研究されてきたかも書かれていて興味が尽きません。
ゴジラのような巨大怪獣による災害が日常的に発生する世界で、怪獣の研究者に焦点を当てた漫画作品です。研究のために死骸を解剖調査する作業中にも、巨大な寄生虫や二次発生する未知の怪獣に襲われるなど、危険と隣り合わせのトラブルが次々と起こります。怪獣の被災者や遺族の感情、あらたな災害の発生。非難が集中し、自らも危険を感じる中ででも研究する意味を、「未知を既知に変えることが防災になる」といいます。そして研究者は「一生をかけてピラミッドの石をひとつ積むようなもの」とも。
そうやって長い年月、多くの研究者がひとつずつ学問の石を積んできたことで、なぜ白亜紀からジュラ紀の頃だけ石油ができたのか、どうやって高い山脈ができ今の地形になったのかを、私たちは知ることができます。宇宙の果てから生命の仕組み、人間の営みや歴史を紐解くなど、多様な分野の研究成果によって世界が解明されてきました。
その一方で、世界には依然として多くの謎があふれ、たとえば地震予知は現在の技術では実現できていません。この作品も「怪獣」を「地震」に読み替えてみると、リアルな現実として実感できます。
今この瞬間も、石をひとつ積むことを目指してさまざまな分野で研究を続けているだろう人たちに、思いを馳せたくなる本でした。
気軽に読める研究者本を1冊紹介します。
世界各地へ出かけて行ってフィールドワークを行う研究者も多くいます。熱帯や極地だったり、少数民族の集落だったり。そんな時の衣食住ってどうしているんだろう、というところに焦点を当て、15人の研究者がフィールドワークの実態についてエッセイを寄せています。ちなみに南極でのフィールドワークについて書いているのは、松川町出身の菅沼悠介さんです。
「主食が酒」という村での日々の食事。身にまとった四角い布1枚を便利に使いこなして、身軽に旅をつづける人々。研究をするためにはそこに住む人と同じ暮らしをすることが重要とわかっていても、なかなか溶け込めない苦労が綴られます。
笑いあり、涙ありのエッセイから、研究にかける熱い思いが伝わってくる本です。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。