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よむとす No.369 別れのその先

[2026年7月1日]

ID:1252

別れのその先

上郷図書館 松沢 元香

7月7日の七夕は、離れ離れになった織姫と彦星が一年に一度再会する日です。「また会いたい」という願いは、人が古くから抱いてきた普遍的な思いではないでしょうか。
かくいう私も地元に戻り、距離の離れた友人など会いたい人に気軽に会えることが、当たり前なことではなく幸せなことなのだと改めて感じています。そんな、七夕の「再会」に思いを巡らせたときに浮かんだ2冊です。別れの悲しみや、大切な人を思う気持ち、再会への希望。それぞれ異なる形で死や別れを見つめながら、その先に続く絆や希望を描いています。あたたかな希望に触れられる作品を通して、大切な人を思う時間を過ごしてみませんか。

『はるかな国の兄弟』

『はるかな国の兄弟』(別ウインドウで開く)
アストリッド・リンドグレーン/作 大塚 勇三/訳 岩波書店 2001年6月 初版1976年

「再会」で真っ先に思い浮かんだ1冊です。この物語は、兄弟の絆を軸に、自由を求める戦いと成長を描いたファンタジー作品です。病弱な弟カールにとって、勇敢で誰からも愛される物語の王子様のような兄ヨナタンは憧れの存在です。しかし、火事からカールを救おうとしたヨナタンは命を落としてしまいます。悲しみにくれるカールでしたが、やがて自らも死を迎え、兄が生前話してくれていた死後の世界「ナンギヤラ」へと旅立ちます。緑豊かでおとぎの国のようなサクラ谷での再会に喜ぶ兄弟でしたが、その世界には暴君テンギルによって自由を奪われた人々がいました。暴君に真正面から立ち向かうヨナタン。そんな兄のように勇気を振り絞りながら成長していくカール。ふたりの兄弟の強い絆に心動かされます。
美しい世界の中で繰り広げられる過酷な運命、次々と訪れる試練に胸を締め付けられながらも、兄弟の行く末から目が離せません。そして迎える結末は、読む人によってさまざまな受け止め方ができると思います。私自身も最後の選択には複雑な気持ちになり、読み終えた後もしばらく考え続けました。

『ライオンのおやつ』

『ライオンのおやつ』(別ウインドウで開く)
小川 糸/著 ポプラ社 2019年10月

余命を宣告された主人公・雫が、瀬戸内海の小さな島にあるホスピス「ライオンの家」で過ごす日々を描いた物語です。ライオンの家では、毎週日曜日に「おやつの時間」が開かれます。入居者たちは、人生で忘れられない思い出のおやつをリクエストし、よみがえる記憶、大切な人との思い出が語られます。
主人公の雫は私と同世代ということもあり、「もし自分だったら」と何度も考えて読みました。物語には常に死の気配がありますが、不思議と重苦しさはなく、穏やかであたたかな空気が流れています。一方で、平静を保っているように見える人たちがふと本音をもらし、不安をのぞかせる場面からは生きることへの切実な思いが伝わってきました。
また、この作品の魅力は死だけを描いているのではなく、亡くなった後も残り続ける家族や友人との絆も丁寧に描いているところにもあります。限られた時間の中でどう生きるのか、生き方を決めるのはいつも自分自身なんだと静かに語りかけてくれるようでした。悲しさではなく、よりよく前を向いていけるようなあたたかな余韻が残る作品です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。