中央図書館 氏原 理恵子
日本から遠く離れた国では、今も信じられないほど悲惨な争いが起きています。自分の意思で人生を選ぶことや、自由に生きることさえ許されない理不尽な社会に生きている国の方々に想いを寄せ、現代社会のあり方について考えてみませんか。世界の出来事は、日本人の私たちの暮らしや生き方ともつながっています。
写真家の母親と5歳のみーちゃんは、世界で暮らす「難民」と呼ばれる人に出会う旅に出ます。ドイツ、ベルギー、ヨルダン、トルコなどの国を訪れて、そこで出会った人々と話したり遊んだりします。みーちゃんは難民の人たちが特別な存在ではなく、自分と同じように家族やふるさとを大切に思う普通の人々であることを感じていきます。こどもの素直な目を通して、戦争や紛争によって国を離れざるを得なかった人々の現実や思いを伝えてくれます。難しい難民問題を身近な人の物語として考えるきっかけを与えてくれる作品として、こどもさんと一緒に読んでいただきたい一冊です。
国境によって生まれる分断と、そのはざまで生きる人々の現実が描かれており、日本で暮らす難民申請者や支援者の弁護士等を取材し、「難民とはだれか」「国境とは何か」を問いなおしたノンフィクションです。移民や難民は遠い国の出来事ではなく、私たち日本社会の中にも存在しています。国境や制度の壁、理不尽な社会の中で生きる人々の人生を通して、人間らしく生きる権利を保障する日本社会のあり方について、身近な問題として考えさせてくれます。著者は『エンジェルフライト国際霊柩送還士』(別ウインドウで開く)(集英社)で、2012年に第10回開高健ノンフィクション賞ほか多数受賞しています。
世界各国や日本で起きている分断や排除を乗り越えるために、私たちがどのような社会のしくみを築くべきかを問いなおしています。効率化や多数決が優先されがちな現代社会において、伝統回帰として民主主義が本来持つ「人と人との関係性」や「地域のつながり」の大切さについて語り、互いの声に耳を傾け、時間をかけて合意を築いていく営みを重視すること、私たち自身が「人としての生き方」や「人や地域とのかかわり方」を捉えなおす視点を与えてくれます。自分とは異なる立場や意見を持つ人とどう向き合うのか、小さな声をどう受け止めるのか、その問いは地域社会や日々の対話の中で試されていることに気づかされるでしょう。足元の暮らしから、民主主義のあり方を静かに問いなおしていきたいものです。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。