中央図書館 伊坪 美穂子
朝の通勤時間に、「クラシックの庭」というNHK・FM放送の番組を聞いています。クラシックは自律神経を整えると聞いたことがあるからで、クラシック音楽を聴きながらの通勤時間は、なかなか良いものです。3月3日の耳の日には、良い音楽を聴いて耳を楽しませる、そんな意味もあるようです。音と耳にまつわる本を紹介します。
サムライヘアで知られる、ピアニストで指揮者の反田恭平さんの著作です。2021年の第18回ショパン国際ピアノ・コンクールで、日本人では半世紀ぶり最高位となる第2位を受賞し、世界の注目を集めました。アニメ『ピアノの森』では天才ピアニストの阿字野壮介の演奏を担当しました。主人公の一ノ瀬海のピアノも実は反田さんだとか。
幼少期、サッカー選手になりたかった反田少年は、ケガをきっかけにピアニストを目指します。「人生とは、終止符のない音楽なのだ。」と自身の半生を自らの言葉で綴っています。ショパンコンクールの章では、予選からファイナルラウンドまでの心の動きがつぶさに描かれ、演奏が聴こえてくるようです。今では奥さんとなったよきライバルたちとの関係や、音楽のこれからについてもたくさん語られています
チケットは取れないでしょうが、生演奏を聴いてみたくなります。それにしても天は二物を与えずといいますが、世の中には二物も三物も持っている人がいるものです。
「それでは、皆さん、会場でお会いしましょう!」なんて締めくくり、カッコいいですよね。
「耳に棲むもの」って、いったい何者? そして、少し奇妙な表紙に惹かれ本を手に取りました。
この本は、補聴器のセールスマンと、彼にかかわる人々との少し不思議なやり取りを描いた5編からなる短編小説です。「カルテット」「耳たぶ」「小鳥」「踊り」「ラッパ」がそれぞれの短編のテーマなのですが、「踊りましょうよ」の中に、こんな一節があります。
「自分の提供した補聴器で、顧客の耳の穴が塞がれるたび、セールスマンさんはなぜか安堵を覚えた。」
補聴器は、外の音がよく聞こえるようにするための道具だと思うのですが、このセールスマンさんにとって、補聴器は付けている人の耳の中にあるものを守っているものなのです。
一回読んだだけでは、「これってどういうこと?」と思う表現が多く、何回も読み返して想像をめぐらす場面も多くあります。例えば、
「骨壺から取り出された四つの骨片は(中略)耳の中に棲んでいるものたち、と言えばよろしいでしょうか。」
しかし、その表現が癖になる作品です。短編の全体になんとなく漂う不思議な雰囲気、その中に耳と、音と、思い出が混ぜ合わさって、ファンタジックな世界を作っています。
中央図書館の音楽の棚には、作詞家・作曲家にまつわるもの、ピアノをはじめいろいろな楽器の楽譜や演奏方法、童謡や唱歌、歌謡曲の歌詞など、音にまつわる本がいろいろあります。それでは、みなさん、ぜひ図書館でお会いしましょう!
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。