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よむとす No.359 見えている世界は、ひとつだけ?

[2026年1月15日]

ID:1217

見えている世界は、ひとつだけ?

上郷図書館 小沢 朋弥

私たちはきっと、世界には自分とは違う見え方があると知っています。それでも普段は、自分や所属する社会の「あたりまえ」の中で暮らしています。
読書は、そんなあたりまえをやさしく揺さぶり、新しい世界の見え方を教えてくれます。多様な視点や、知らなかった世界に出会える本を紹介します。

『幻のネズミ、消えたY』

『幻のネズミ、消えたY』(別ウインドウで開く)
黒岩 麻里/著 岩波書店 2025年9月

ヒトは23対の染色体を持っています。その中で性決定にかかわっているのが、X染色体とY染色体。Y染色体がないと、オスにはなれません。これは生物学の常識です。
ところが、そんなY染色体を持たない哺乳類が、なんと日本にいます。奄美大島に生息する「アマミトゲネズミ」と、徳之島に生息する「トクノシマトゲネズミ」。この2種のトゲネズミは、Y染色体を持たないのにも関わらず、ちゃんとオスが生まれてくるのです。
しかもどちらも、日本の固有種で、天然記念物で、絶滅危惧種。この“幻のネズミ”を20年以上も追い続けた研究をまとめたのが、この本です。
研究は決して一筋縄では進みません。思うようにいかない調査、立ちはだかる壁の数々。それでも著者は知恵を絞り、人とつながりながら道を切り拓いていきます。調査や研究の現場が生き生きと描かれ、まるで研究室を覗いているような感覚になります。
そして、ついには国際科学雑誌への論文掲載へ。トゲネズミの性決定遺伝子の謎に迫る研究が人と人をつなぎ、世界をつなぎます。科学が「発見」だけでなく、「つながり」から生まれることを実感できる一冊です。

『1は赤い。そして世界は緑と青でできている。』

あなたの「1」は何色ですか? 私はアラビア数字の「1」を見ると、赤色を感じます。漢数字の「一」や他のアラビア数字に色はありませんが、なぜか「1」だけ強烈に赤色なのです。ですから、このタイトルを目にしたとき、思わず「そうそう!」と強く頷きました。
著者は心理学を専攻している大学生。文字や数字に色が見える「共感覚」という知覚現象を持っていて、幼少期からのエピソードが詰まった一冊となっています。
共感覚というのは、ある刺激に対して、その本来の感覚にほかの刺激が伴って生ずる現象のこと。文字に色が見える色字(しきじ)共感覚、音を聞いて色が見える色聴(しきちょう)共感覚、味に形を覚えるなどさまざまな現象があります。珍しく思われがちですが、「土曜日は青、日曜日は赤」と感じる人は意外と多いはず。これもカレンダー色字共感覚と呼ばれ、程度の差はあれ、誰もが何らかの共感覚を持っているという説もあるそうです。
この本の魅力は、著者自身の体験談だけでなく、いくつか研究説を紹介しながら、自身がなぜ色字共感覚を持つようになったか考察している点にあります。さらに、著者自身が研究対象となって大学で実験を受ける様子まで描かれているのがユニークです。自分とは少し違う、不思議な見え方・感じ方をしている人たちがいることに気づかせてくれる、そんな発見に満ちた一冊です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。