【曙町】 林 直彦
ショッピングモール「スワン」での無差別銃撃事件を生き延びた少女いずみは、事件の渦中で保身のために人質を見捨てたと暴露され非難されます。そんな彼女のもとに、事件の関係者5名が集まる「お茶会」の招待状が届きます。
無差別銃撃事件の犯人に捕まり最も近くにいながら、犯人のいたずらな行動で生き延びたいずみ。犯人は大量に人を殺しながらも最後に自殺。犯人がもちろん悪いのは事実だが、犯人が自殺して存在しない以上、世間はその責任をさまざまな所に求める。管理会社、警備員、そして、生き延びた人たちにまで。
大量殺人の中、ひとりの不審な死に方を探る話し合いの中、それぞれが何か闇を抱えて、そして何か嘘をついている。真実が明らかになっていくにつれ、凄惨な事件の中に渦巻いたすさまじい感情が、読者の心をえぐり取ります。
実際にこんな事件が起こって、その場に自分が居たら。どの行動にも間違いなんて無いはず、でも、どの行動も後悔になってしまう。当たり前だけど、犯人だけが悪い。他は、誰も、悪くない。それでも、誰にも言えない真実は自分の心を追い詰めていく。私も、加害者なのかと。
僕は結構本を読むのが遅いんですが、面白くなるまでがなかなか苦痛に思えてしまう性分でもあります。でもこのスワンは面白さの初速が早い。一気に止まらなくなりました。事件の犯人は誰なのか?とか、トリックは?とかいう、いわゆるミステリーとは違う、明確に犯人の居る大きな事件の中で起きた、それぞれの心の葛藤を解いていく、すこし特殊なミステリーですが、心揺さぶられるほど面白かったです。
こちらは二つとも画集なので、見て可愛いと思う人が居てくれればそれだけで十分です。
ただ、ちょっとうんちく気味に語らせてもらうと、シシリー・メアリー・バーカーは20世紀前半の作家なので、そこまで古い作家では無いですが、ミュシャとかと同じ時代を生きた作家です。
たまたま行った美術館で知った作家なんですが、僕は写実とファンタジーの入り混じった絵が好きなのでけっこう一目ぼれでした。ミュシャと同じく、画家というより挿絵作家の側面が大きい方なのですが、花の描き方と、それを妖精にデフォルメするかわいらしさがなんとも素敵。
そしてヒグチユウコは今最も勢いのある画家といっても過言では無いかもです。今はグッチとのコラボや、ちょっと前はモスバーガーともコラボしてました。
こちらも超写実的な表現に、ファンタジーとグロさを兼ね備えた唯一無二の作風で、すぐに虜になりました。
好きな絵を見た時に、もしかしたらこの人の作風に影響を受けてるんじゃないかなぁ?なんていう見方をするのも好きで、もしかしたらシシリー・メアリー・バーカーの影響を受けているんじゃないかなぁ?と思ったので、一緒にしてみました。流し見で良いので、是非一度ご覧ください。
令和7年度に、飯田市立中央図書館は開館110周年を迎えます。記念事業のひとつとして、本と人との出会いの場を広げるために、市民の皆さんからもおすすめ本紹介文を募集し、「よむとす」として掲載していきます。
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