【羽場】 熊谷 亮三
世界の各地で戦争や紛争が続いています。終わらない戦争は無い、とはいうものの、過去の戦争はどのような状況・条件下で終わり、交戦した国々はその後どうなったのか…。「戦争終結の方法」は、どう模索されてきたのでしょうか。
本書では2度の世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、そして湾岸・アフガニスタン・イラク戦争の終結形態について分析しています。
戦争終結は相手国を壊滅させるばかりが効果的ではありません。完膚なきまで叩きのめすには、味方も相当の犠牲を覚悟しなければならない。いっぽうでその犠牲を惜しんで相手に妥協・譲歩して停戦すれば、争いの火種が再び燻る可能性があります。「現在の犠牲」と「将来の危険」、今までの戦争がこの2つのどちらを重視して終結させてきたか、本書は主に外交交渉の視点から振り返ります。
戦争や紛争を未然に回避する方法を考えるのはもちろん重要ですが、本書では「起きてしまった戦争をいかに終わらせるか」お互いの国や地域の存続のためにもっと論議されるべき問題提起が為されています。至って冷静な語り口の中に、真の平和回復を願う著者の熱い思いを感じました。
旅先で本を読むのが好きです。いつもと違う場所で本を読んだということが印象深く残るのか、時が経っても「この本は此処彼処で読んだなあ」と覚えていたりします。
本は自分で持っていくほかに、旅先の書店で買って読むこともありそれも楽しいことですが、最近は泊まれる本屋や、充実した本棚を持つ旅館があるとか。いつもなら手に取らない本でも、そんな場所での本との出会いを体験できたらきっと忘れられないだろうなと思います。
この本に出てくるのは「文庫旅館」。古書ばかりの文庫本を集めた棚があります。切り盛りする若女将は「鼻が利きすぎて」自分では蔵書を読めず、そのかわり「この本が合うのでは」と、宿泊客に薦めます。物語ではそれぞれ複雑な事情を抱えたお客と、若女将の薦めた文庫とがどう繋がっていくのか、5つの短編で繰り広げられます。
舞台の旅館は海に近い、小さな宿です。「旅の夜は案外長い」という言葉からも想起できる、読書に没頭できそうな佇まい。朝夕の食事からさまざまなおもてなしまで、居心地のよさをさりげなく提供する若女将の振る舞いにも魅かれるものがありました。
私も思い出作りと未来への懸け橋となるような「旅のおともの本」と巡り合う、そんな旅行体験をしたいなと改めて思いました。
令和7年度に、飯田市立中央図書館は開館110周年を迎えます。記念事業のひとつとして、本と人との出会いの場を広げるために、市民の皆さんからもおすすめ本紹介文を募集し、「よむとす」として掲載していきます。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。