中央図書館 森山 ゆり
今回紹介する本のように、生き物たちの言葉がわかるようになれば彼らの視点から世界を眺めることができるかもしれません。それは自然とのあたたかなつながりを育み、私たちが見逃している大切なことに気づかせてくれるのではないでしょうか。
この本は動物言語学者である著者による科学エッセイです。鳥の鳴き声が単なる感情表現ではなく、具体的な意味を持つ単語や文法であることを証明した画期的な研究を紹介しています。
特に、シジュウカラが20以上の単語を組み合わせて文を作ることを世界で初めて解明したのです。
この本では、著者が軽井沢の森でシジュウカラを観察し鳴き声を録音、分析する過程が詳しく描かれています。例えば、シジュウカラが「ジャージャー」という鳴き声でヘビの存在を知らせたり、「ピーツピ(警戒しろ)」「ヂヂヂヂ(集まれ)」という単語を組み合わせて「ピーツピ ヂヂヂヂ(警戒して集まれ)」と意味のある文を作り、メッセージを伝えていることがわかりました。
そして、なんといってもこの本の魅力は、科学的な内容をやさしい文章でわかりやすくユーモアを交えて語っている点です。著者の長年に渡る研究の背景や、鳥たちとの交流のエピソードが豊富に盛り込まれており、まるで自分も研究者の一員として森の中にいるような感覚を味わえます。
この本に書かれた研究は動物言語学の新たな可能性を切り開くと評価されており、今後更に多くの動物の言語が解明されるかもしれません。そんな未来を想像するとワクワクせずにはいられません!
ニルスは家畜をいじめるいたずら好きな少年でした。しかしある日、妖精に魔法をかけられ小人になってしまいます。小さくなったことで動物たちの言葉を理解できるようになり、家で飼っていたガチョウのモルテンとともに渡り鳥のガンの群れに加わってスウェーデン各地を巡る旅が始まります。
ニルスは旅を通じて動物たちとの交流を深めながら成長していきます。小動物や仲間のガンの命を救ったり、ニルスもまたガンたちに助けられたりと、お互い強い絆で結ばれていくのがわかります。
キツネやどぶねずみ、カラスなどの多くの動物たちとの攻防戦はハラハラドキドキしてページをめくる手がとまらなくなります!また、スウェーデンの情景の細やかな描写がまるで自分がそこに行き、旅をしているような気分にもさせてくれます。
旅の最初から寄り添うモルテンとの最後のエピソードはニルスの成長と友情の深さがよく表れているとても心に残る場面です。友情や勇気、思いやりの大切さを知ったニルスは、はたして小人から人間に戻ることができるのでしょうか?
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。