中央図書館 関口 真紀
中央図書館は大正4年に誰もが利用できるまちの図書館として開館し、今年110周年を迎えます。本を借りるだけでなく、本や人と出会う「わくわく」が生まれる場所、交流する楽しさを共有できる場所として、これからも多くの皆さんにご利用いただきたいと考えています。9月と11月には、実行委員会「いい図書110もりあげ隊」のみなさんと一緒に記念事業を行います。どうぞお楽しみに。
今回は、「地域とつながる場所」をテーマに本をご紹介します。
メッセージを添えて本を貸し借りしたり、語り合ったりすることでゆるやかな人のつながりを生み出す「まちライブラリー」という活動が全国にあります。場所は、喫茶店や森の中、駅、病院などさまざまです。その「まちライブラリー」をつなげるイベントが「ブックフェスタ」で、この本は、「まちライブラリー」の提唱者である磯井純充さんや磯井さんの活動に賛同した方々が、活動を通して考えたこと、つながりができた人々のことを語った記録です。「ブックツーリズム」という本を観光振興の要としたイギリス発祥の活動も紹介されています。作家の原田マハさんも登場するなどさまざまな方の発言がありますが、共通しているのは、人をつなぐ本の力です。
本を読むことは個々の営みですが、本には個々の内面を引き出しつなげる力があります。初対面の人とでも、本の感想を伝え合うことで自分の考えが伝えやすくなります。また同じ本でも読み方は人それぞれ、多様な人々を包み込む力が本にはあるのだと教えられます。
この本の著者の一人に、岐阜市立図書館の元館長の吉成信夫さんがいます。吉成さんは、岐阜市立図書館が入っている施設「みんなの森ぎふメディアコスモス」を、開館9か月半で来場者100万人を達成させた実績をお持ちの方です。記念事業のひとつで11月29日に行うシンポジウム「明日の図書館を語る会」においでいただき、本の力を生かし、みんなが思いを持ちより共有するコミュニティづくりについてお話を伺います。興味のある方はぜひお越しください。
この本は昨年の話題作、主人公成瀬あかりの奔放で型破りな行動や生真面目さがすごく面白い、ユーモアあふれる青春小説です。この物語の根底には、「人と人とのつながり」や「地域のつながり」があります。成瀬は人を巻き込みながら、自分のやりたいことを楽しそうにチャレンジし、成瀬の個性に引っ張られて、巻き込まれた周りの人たちも少しずつ変わっていきます。将来のある中学生や高校生が、自分のやりたいことができる場が地域にある、つながりをもてる場が地域にあるって素敵だなとこの本を読んで思いました。飯田の図書館も成瀬がひと夏を捧げた西武大津店のような「地域に愛される場所」になれるといいな。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。