上郷図書館 矢澤 恵
知らないことを知る楽しみは、読書の醍醐味のひとつです。
こんな考え方があったのか、こんなことに夢中になる人がいるんだ、自然ってすごい、など興味は尽きません。自分の考えもしなかったこと、興味もなかったことと出会う方法のひとつを紹介します。
施主である著者二人が「図書館に住みたい」という思いから、蔵書5万冊を収める自宅を建てる経過を綴った本です。家を建てるプロセスだけでなく、本のある空間の良さについてや、本を読むことについての考察も書かれています。
その中で山本さんが紹介していることが、ひとつのレーベルを「つべこべいわずに全部読む」という読書。自分が興味があるかとか、役に立つかとかは考えない。山本さんは大学生のころ、自分の関心のないものを視野に入れるための工夫として岩波文庫を全部読むことを始めたそうです。
とはいえ限りある時間の中で、実践はむずかしい。山本さんも時には、表紙、目次、索引などを眺め、パラパラと目を通すところまでとのことです。
表紙や目次を眺めて、気になったところを拾い読みするぐらいの気軽さで「レーベル全部読み」に挑戦してみませんか。飯田市の図書館が全点購入しているものの中から、読みやすいレーベルを紹介します。多種多様なテーマを扱っているものばかりなので、世界が広がることは間違いありません。
幅広い学術、教養のレーベルとして知られる「岩波新書」のジュニア版として創刊されました。10代を対象として書かれていますが、広い年代に読まれています。ものごとを「ちょっと深く知る」のに最適なシリーズです。
科学系の新書レーベルです。「科学は難解である」という先入観をなくし、多くの人々が科学への興味もつことを目標に、わかりやすく書かれていることが特徴です。
現在まで2200点以上発行されていますが、発行部数第1位*は飯田市出身の後藤道夫先生による『子どもにウケる科学手品77』(別ウインドウで開く)だそうです。(子どもの森公園のおもしろ科学工房を創設した方です。)*2025.4現在
小学生からを対象とした絵本のシリーズ。世界がこんなにも "ふしぎ" に満ちていることを専門家が紹介しています。ユニークなテーマが多く、大人でも読み応えがあります。
私はこのシリーズを20年近く読み続けていますが、発行は月1冊(40ページ)なのでそんなに負担感はありません。そのおかげで知ることができたのは、南米のトカゲ「バシリスク」が水の上を走る秘密、インカの遺跡にみられる地震対策、同じ5分でも感じ方の違う「心の時間」とは何か、世界中に沈んでいる沈没船の数々…。
どのレーベルも、知識はもちろんですが、書いている専門家の熱い想いが伝わってきます。 新たな世界への扉を開いてみませんか。
岩波ジュニア新書『「空気」を読んでも従わない』鴻上尚史/著2019年(別ウインドウで開く)・『読みたい心に火をつけろ!』木下通子/著2017年(別ウインドウで開く)・『研究するって面白い!』伊藤由佳理/編著2016年(別ウインドウで開く)
ブルーバックス『子どもにウケる科学手品77』後藤道夫/著1998年(別ウインドウで開く)
たくさんのふしぎ『バシリスク』嶋田忠/文・写真2011年(別ウインドウで開く)・『ナミブ砂海』野村哲也/文・写真2016年(別ウインドウで開く)・『地球の中に、潜っていくと…』入舩徹男/文2019年(別ウインドウで開く)
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。