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よむとす No.341 「その時」

[2025年4月15日]

ID:1174

「その時」

鼎図書館 玉置 郁子

『人生は何が起こるかわからない』良くも悪くも本当にその通りだと実感する今日この頃。だからこそ、日々後悔しないように、充実して過ごせるようでありたいとも思います。ただ、何かを変えようとしても、なかなか変えられないのも常です。だからせめて、今ある「その時」を楽しめたなら。そんな気持ちになれる本を紹介します。

『父のコートと母の杖』

『父のコートと母の杖』(別ウインドウで開く)
一田 憲子/著 主婦と生活社 2024年11月

作者は60歳。それまで離れて暮らしていた81歳の母親の入院を期に、92歳の父親と2人で暮らすことになります。そして、そこから始まる、両親との「出会い直し」の様子が描かれています。誰にでも平等に訪れる当たり前の老いを両親に見て、つらい気持ちに苦しんだこともありました。けれど、「歳なんだもの、仕方ないさ」と割り切れてから楽になったそうです。そして、自分が「子供」という立場を抜け出して、両親と同等の「大人」という目線に立てたそのとき、親は「老いる」ということを、いくつになっても、身をもって自分たちに教えていてくれているのだと、気づくことができたといいます。
私は、「人生はすべて「はじめて」の連続だ。父と母は初めて80歳を生き、90歳を生きている」という言葉にとても納得しました。生きていることは、子供も大人も変わらぬ初めての連続で、ドキドキワクワクが人生なのです。そして、そんなことに気付かせてくれる、一田家の3人の織りなす、その時、その時の、優しく、楽しいエピソードが読む側も優しい気持ちにさせてくれます。

『道草ワンダーランド』

『道草ワンダーランド』(別ウインドウで開く)
多田 多恵子/著 NHK出版 2023年2月

この本は、雑草や野の花、庭の花や植木など身近な植物を、写真を使って科学的な視点から観察し、植物の生きる知恵や工夫を探っています。難しい植物用語は避け、誰でも予備知識なしに植物の「その時」を楽しめます。例えば、春の木々は一斉に芽吹いて新しい葉を広げるが、その中でも目を引く赤い新芽。それはUVカットのサングラス。夏から秋に美しく咲くヒガンバナ。毒を秘めたこの花を、人々が大切に植え、広めた理由。どうして冬は赤い実をつける植物が多いのか。その赤い実の戦略。等々、気になる答えはこの本の中にあります。
そして、「道草ガイド」として植物のつくり、調べ方、用語、さらに、服装から持ち物まで「道草」を楽しめる方法も書かれています。本の中だけではなく「道草」を通して、植物の美しさと生きる知恵など、その時、その瞬間の不思議な世界を楽しめたらいいなと思える1冊です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。