上郷図書館 杉本 敏子
最近、孫の離乳食が始まりました。何回かその場に居合わせたのですが、ぱくぱくとよく食べます。初めて食べたキウイフルーツの酸味に身震いする姿には、笑ってしまいました。大人になって当たり前に食べていますが、こういうことの積み重ねの上にあるのだと今更ながらに思いました。
食べることにちなんだ本を紹介します。
学生時代の友人たちで立ち上げたベンチャー企業「ぐらんま」で働く社員たちは、多忙な日々を送っています。不規則な生活で食事はおろそかになり、社内は散らかり放題、そんな状況を改善しようと社長の提案で会社に家政婦を雇うことになります。やって来た家政婦は不愛想ですが完璧に家事を行い、いつも心がほっとする料理を振る舞ってくれます。食事を通して社員たちは、心を開いていきます。食事の場面で、おいしい料理を食べると体だけでなく心も満たされる感じが伝わってきます。
いつも自分の作る料理が代わり映えしないせいか、家政婦さんの作る鯛めしやおにぎり(具材が大根菜とじゃこ、しそふりかけと枝豆)がおいしそうで、これを食べたいと思いました。自分が作る側になり、人が作ってくれるご飯はおいしく、何もしないでも頂けるありがたみを感じています。
話が進むにつれて、登場人物たちの過去や人間模様の影の部分も出てきて、料理がテーマのほのぼのだけでなくミステリーの要素もある小説です。
夫婦イラストユニットのはらぺこめがねさんのイラストエッセイ集です。
この本を手に取ったきっかけは、以前読んだ絵本『あげる』(別ウインドウで開く)(佼成出版社 2022年4月)が衝撃的だったからです。揚げ物をテーマにしていて、ページを開くと描かれている大きなエビフライのおいしそうなこと!食いしん坊にはたまらない本でした。
この本も期待を裏切ることなく、おいしそうなイラストが登場します。カレイの煮付けでは「君は煮付けがよく似合う」や「飴色になった君の姿に、僕はたまらずのどが鳴る」と言った絶妙なコメントが付いています。
食べることの楽しさが詰まった1冊です。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。