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よむとす No.321 建築を楽しむ

[2024年6月15日]

ID:1116

建築を楽しむ

中央図書館 宮下 裕司

「建築」という言葉から何を思い浮かべるでしょうか。個人の住宅から、神社仏閣といった伝統建築もあれば、公共施設や高層ビルまで、さまざまな建築物が連想されると思います。そんな建築の世界を、私が個人的に楽しんだ本でご紹介します。

『藤森照信作品集』

『藤森照信作品集』(別ウインドウで開く)
藤森 照信/著 増田 彰久/写真 TOTO出版 2020年6月

今年の1月に諏訪大社上社をお参りした際に、近くにある茅野市の「神長官守矢史料館」を訪ねました。この施設は、地元出身の建築家藤森照信氏の設計によるもので、鉄筋コンクリート造りでありながら、仕上げに土壁や木材などの自然素材を多用した独創的な建物です。この本は、こうしたユニークな建築で知られる藤森氏の作品集です。藤森氏は、もともとは建築史の研究者で、建築家デビューをしたのは45歳の時、この「神長官守矢史料館」を建てたのが最初だそうです。
私自身が実際に訪ねたことがある建築としては、「浜松市秋野不矩美術館」や多治見市の「モザイクタイルミュージアム」がありますが、それらを含めて60以上の作品が大判の写真で紹介されており、この1冊がまるで藤森建築を楽しむ美術館であるような印象を受けます。

『看板建築図鑑』

『看板建築図鑑』(別ウインドウで開く)
宮下 潤也/著 大福書林 2019年12月

「看板建築」という言葉には、なじみがない方が多いかもしれませんが、この言葉を世に広めたのは、先に紹介した藤森照信氏なのだそうです。「看板建築」とは、大正から昭和初期にかけて建築された「疑洋風商店建築」ともいわれる建物のことです。日本の技術で建てられた木造建築なのですが、表通りに面した正面部分が、看板のように大理石風であったり、レンガ造り風であったりするというレトロな建築物です。
この本は喬木村出身の著者が、取材当時に現存していた「看板建築」を記録として残すために図鑑にまとめたものです。写真をもとに、製図ソフトなどを使用して描かれた立体的なイラストでさまざまな「看板建築」が収められています。どの建物も味わいがあるのですが、個人の商店や住宅であるため、家主の移り変わりによって取り壊されてしまうことが多いそうです。
著者の宮下氏はあとがきで、「看板建築の世界を知れば、ふだん眺めている街の見え方が変わるかもしれない。今まで気にもとめていなかった建物が愛おしく感じられたり、「何もないところ」だと思っていた風景が一変、宝の山に見えたりするかもしれない」と述べています。

『物語のある家』

『物語のある家』(別ウインドウで開く)
妹島 和世/著 インデックス・コミュニケーションズ 2005年4月

飯田市に世界的な現代建築があるのをご存知でしょうか。三穂にある「飯田市小笠原資料館」です。この建物を設計したのが、この本の著者である妹島和世氏です。妹島氏は西沢立衛氏との建築ユニットSANAAとして、1995年から1999年にかけて「飯田市小笠原資料館」の設計をされました。妹島氏の母方に小笠原家とのゆかりがあったことによるものだそうです。「飯田市小笠原資料館」については、『妹島和世+西沢立衛読本-2005』(別ウインドウで開く)などの作品集がありますのでご覧ください。SANAAの建築として有名なものには「金沢21世紀美術館」などがあり、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を2010年に受賞されています。
この『物語のある家』は、児童書として出版されたもので、妹島氏の設計で2003年に完成した「梅林の家」という個人住宅を紹介しています。この家は、5人家族と猫1匹のために設計された3階建ての家で、住人である小学1年生のぼくが、家の中を案内してくれるつくりになっています。妹島氏のプロフィールも読みやすく、建築はもちろん、妹島和世さんという人を感じることができる本です。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。