中央図書館 関口 真紀
私は直売所に行って地元産の野菜を買うことが好きです。最近気になっているのが伝統野菜です。南信州地域は伝統野菜が多い地域とのこと。そこで、今回は伝統野菜についての本をご紹介します。
伝統野菜とは、特定の地域・場所で古くから栽培されてきた野菜のことです。もともと日本原産の野菜は少なく、ほとんどが外国原産なのですが、長い歴史の中で多種にわたる野菜が日本へ伝播してきて、その土地での自然環境・風俗習慣・文化にあわせて在来品種野菜ができていったそうです。ところが、1960年代なかばごろから効率的に安定生産できるような品種への改良が進んだため、在来品種野菜は生産量が激減してしまいました。近年になって、在来品種野菜は伝統野菜と言われるようになり、地域ブランドとして注目されるようになってきました。私も伝統野菜を知ることは地域を知ることにつながると興味をもちました。
この本は、長野県の伝統野菜を調べるのに役立ちます。飯田市ではどんな伝統野菜があるのか見てみますと、「源助蕪菜・飯田蕪菜」、「飯田冬菜」、「下栗芋」、「千代ネギ」といったよく知っている野菜から、「くだりさわ」、「鼎胡瓜」という知らない野菜もありました。「くだりさわ」は天明の大飢饉の窮状を救った南信濃のジャガイモ、「鼎胡瓜」は明治末から松川の段丘面などで栽培されており、鼎の特産品として有名だった大きな胡瓜だそうです。それぞれの野菜の特徴や栽培の経緯などが記されていて、読み物としても面白い本です。
著者の小林宙さんは、小学生の時にアサガオの栽培などでタネに興味をもち、伝統野菜のタネを未来に残そうとタネを販売する会社を15歳のときに起業しました。本を読んでタネに関する知識を深め、全国各地に出かけていってタネを探すことを趣味としているうちに伝統野菜に出合い、あまり知られていない一部の地域で栽培されている伝統野菜のタネはいずれ消滅してしまうかもしれない、なくなりそうなタネを自分が集めて流通させ保存していこうと考えたのが、起業のきっかけだったそうです。
「好き」から地域の課題を捉え、課題を解決するために行動する、その考え方は私達大人も触発されます。花や野菜は好きだけど、タネには興味がなかった私に「固定種」や「F1品種」などタネの多様な世界や、社会問題になっているタネの問題などを教えてくれました。
「地産地消」が推奨されている中、直売所へ行って新鮮な地元の野菜を購入される方は多いと思います。地域ブランドである伝統野菜に関心を寄せる方もいらっしゃるかと思います。伝統野菜の本は、図書館に上記以外にもたくさん入っていますので、ぜひご覧ください。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。