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よむとす No.310 音の波で伝える

[2024年1月1日]

ID:1088

音の波で伝える

上郷図書館 毛涯 まるみ 

普段家事や育児で忙しく、なかなかじっくり何かをする時間が取れません。そんな時はラジオを聞いています。手や目が離せなくても聞けるし、今はアプリで時間や地域は関係なく好きな番組を聞けるのでとても重宝しています。

『ラジオ・ガガガ』

『ラジオ・ガガガ』(別ウインドウで開く)
原田 ひ香/著 双葉文庫 2020年5月

この本はラジオをテーマにした短編集です。第1話の主人公信子がラジオを聞き始めたきっかけは、流産した後、親戚に言われた悪意なき言葉に傷つき、深夜に思い出して泣いている時、行き場のない気持ちを受け止めてくれたことでした。70歳を過ぎケアハウスに入所した信子は、少しの人付き合いと、楽しみにしている深夜ラジオを1人聞いて過ごそうと思っていました。そんなある日、ケアハウスに新しく入った介護士が信子の大好きな深夜ラジオのパーソナリティーとそっくりな体型だったので彼のことが気になります。
信子は自分が思っていることを言いません。にこにこと微笑んでいますが内面はかなり毒舌で人を冷めた目で見ていて、言ってもわからないでしょと思っている節があります。本人に自覚はありませんでしたが自覚してから少し変化が表れ、それまで見ているだけだった介護士をラジオパーソナリティに見立てて話しかけるシーンが、ラジオリスナーとしては胸に響きます。
ラジオは聞いているだけなので受け身のようですが、心の中ではこちらからも話しかけています。頷いたり驚いたり笑ったり、自分なりに付き合えるのがいいと思います。深夜ラジオに至っては信子の言う通り「自分が一人じゃない、ということを確認できるだけで、十分」です。実際のラジオ番組の話も書いてあるので、この本を読んだらぜひラジオも聞いて欲しいです。私のお薦めは「星野源のオールナイトニッポン」です。


『部活でスキルアップ!放送部活躍のポイント』

私は高校の時に放送部でラジオドラマを作りましたが、その時に出会いたかったなと思う本です。
放送部の活動は学校のお昼の放送などいくつかありますが、この本では放送の大会に向けての練習方法や作品の作り方などがメインに書かれています。第一章では基礎力のアップ、第二章では朗読・アナウンス、第三章ではテレビ・ラジオのドキュメントと創作ドラマの制作についてです。
第一章では放送の基本の発声練習が短い文で書かれ、更にポイントを別枠で囲ってあるのでとても分かりやすいです。この内容通りに練習していけば初心者も基礎はばっちりです。第二章・第三章で良かったのは「取材での質問法」というコラムです。アナウンス部門では自分でテーマを決め、取材をし、それを原稿にしますが、この中で取材が一番重要で難しいのです。私は学校の先生の取材をしましたが、聞きたいことが上手く伝えられず、先生が気を遣っていろいろ話してくれてなんとか取材を終えました。当時この本があったらなと心底思いました。
今は個人で動画を撮影して公開するのが当たり前になっていますが、そんな時にも役に立ちます。放送部に限らず初めて取材をする人や動画の撮り方の基礎を知りたい時なども、より他の人に伝わるものが出来上がると思うのでぜひ一度読んでみてください。


『ABC! 曙第二中学校放送部』

『ABC! 曙第二中学校放送部』(別ウインドウで開く)
市川 朔久子/著 講談社 2015年1月

先輩が卒業し部員が二人きりとなってしまった放送部。そこに全国大会経験者が転校してきますが部活をする気はないようで…という中学校の放送部を舞台にしたお話です。私は高校の放送部でしたが、毎年廃部の危機になってしまう部員数のことや、発声練習をする時に周りの目が気になるところなどとても親近感を持ちました。なじみの薄い放送部ですが、この本を読むと雰囲気がわかると思うのでぜひ読んでみてください。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。