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よむとす No.309 心に残るいくつかの詩

[2023年12月15日]

ID:1085

心に残るいくつかの詩

中央図書館 伊坪美穂子

人生の途中で、心に残るいくつかの「詩」に出会います。読みかたは自由、解釈も人それぞれです。はじめて読んだ頃はよくわからなかったけれど、今なら少しわかる。好きな詩人のものも良し、いろいろな詩人の詩を集めたものも良し、今回は日本の詩の本を紹介します。

『日本名詩選 1 明治・大正篇』

『日本名詩選 1 明治・大正篇』(別ウインドウで開く) 
西原 大輔/著 笠間書院 2015年6月

“からまつの林を過ぎて、からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。たびゆくはさびしかりけり。”  (「落葉松」から)
北原白秋の『落葉松』の冒頭です。新緑の芽生えや紅葉の落葉松林を歩くとき、この詩が思い出されます。本書は、白秋をはじめ島崎藤村、高村光太郎など、明治・大正期の詩76編が集められています。第2巻は昭和戦前篇(別ウインドウで開く)第3巻は昭和戦後篇(別ウインドウで開く)です。編者による鑑賞と注釈が添えてあり、より詩の内容のイメージが膨らみます。だれもが知っている詩、初めて出会う詩もあります。
因みに、白秋の詩と、落葉松林を歩いた時のすがすがしい気持ちが自分の中でシンクロしたのは、かなり大人になってからのことでした。

『二人が睦まじくいるためには』

“二人が睦まじくいるためには 愚かでいるほうがいい
 立派すぎないほうがいい”              (「祝婚歌」から)
『祝婚歌』の冒頭です。ずいぶんと前に友達に教えてもらった詩です。結婚の心構えのようなものをうたっていて、まさに結婚に贈る歌としてよまれることも多かったようです。“正しいことをいう時は 相手を傷つけやすいものだと気づいているほうがいい” という一節には、ハッとしたものです。
この本は、吉野弘の詩を編者・田中和雄が編集した本です。「祝婚歌」をはじめ、吉野自身の長女のことをよんだ「奈々子に」など、少しのユーモアと、優しく語りかけるような32編の詩が収められています。時に切なく、時に温かい気持ちになります。

『日本の詩歌 22 三好達治』

『日本の詩歌 22 三好達治』(別ウインドウで開く)
三好 達治/著 中央公論新社 2003年7月

“あはれ花びらながれ をみなごに花びらながれ”  (「甍のうへ」から)
三好達治にであったのは、中学校の国語の教科書です。言葉の確かな意味は理解できなくても、桜散るうららかな春のお寺の情景が見えるようだと感じました。三好達治は私たちには、少し難しい言葉やかなづかいがありますが、言葉にリズムがあり、うつくしい情景を表現しています。
『日本の詩歌』は、全30巻からなり、第22巻が三好達治です。各巻は詩人の初期から晩年までの作品が年代順に編集されており、作詩の変遷が分かり、巻末には年譜もあります。
次のたった二行の詩には、ただただ降り続く真っ白な雪の下で営まれる、人々の静かな生活が凝縮されています。
“太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪降りつむ。
次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪降りつむ。”    (「雪」から)

言葉が作り出す豊かな世界を味わってみてはいかがでしょうか。 


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。