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よむとす No.307 ご安全に

[2023年11月15日]

ID:1071

ご安全に

中央図書館 宮内 萌

「ご安全に」は、作業現場でよく使われる挨拶です。この挨拶を南極観測隊の方々も「おはようございます」や「お疲れ様です」の代わりに日常的に使っています。危険な作業が多い南極で、自分の安全への意識を高める、相手の安全を祈るという意味が込められているそうです。今回は南極に関する本を紹介します。

『南極探見500日』

南極探見500日(別ウインドウで開く)

菊池 健生、鹿糠 敏和/執筆・写真 岩手日報社 2023年5月

「〇年後には海面が〇メートル上昇する」などの気候変動や環境に関する未来の予測に役立てられているのが南極の氷です。過去、現在、未来をつなぐ南極で今、どんな研究や観測が行われているのかがとてもわかりやすく紹介されています。南極ならではの壮大な景色と臨場感あふれる写真で南極を見て、歩いて、「探見」したような気持ちになれます。
この本は、岩手日報社の菊池健生記者が第63次南極地域観測隊に2021年10月から2023年3月まで同行取材したときの様子がまとめられています。菊池記者はこの同行取材にさまざまな思いで挑みました。私がこの本を読んで南極を「探見」した気持ちになれたのは、菊池記者の南極に対する思い、南極の今を伝えようとする思いが写真や取材内容に表れているからだと思います。地球のこと、環境のことを少しでも考えるきっかけになればいいなと思います。

『南極観測隊のしごと』

南極観測隊のしごと(別ウインドウで開く)

国立極地研究所南極観測センター/編 成山堂書店 2014年3月 

この本は、南極観測事業を運営・企画している、国立極地研究所南極観測センターからの視点で、日本の南極観測の歴史、今までどんな研究や観測が行われてきたのか、南極での生活の様子、観測隊員がどのように選ばれているかがとても詳しく書かれています。
例えば、観測隊員の方がどんな服を着て、どんなものを身につけているのか、服やタオルは何日分あればいいのかまで紹介されていたのが印象的でした。
そして、悪天候時には数日間外出できなど予測不能で厳しい自然と共生すること、観測隊員は誰一人欠けても大変なことになる命がけの仕事であること、多くの方が南極観測に携わり、支えていることがよくわかりました。観測隊員に興味がある方、詳しく知りたい方におすすめしたい一冊です。

『南極の食卓』

南極の食卓(別ウインドウで開く)

渡貫 淳子/著 家の光協会 2023年1月

渡貫淳子さんは、第57次南極地域観測隊の調理隊員として2015年12月から約1年半南極で生活をしていました。渡貫さんにとって南極はいつかまた生活してみたい場所、自分の意識が変わってしまうほど影響を受けた場所だそうです。例えば、南極ではごみは自分たちの国へ持ち帰るというルールがあり、ごみの担当者が毎日ごみの処理をしているのを間近で見たことから、日本に帰ってきてからもごみを少なくする、食材を無駄にしないためには?と日々考えるようになったそうです。また、出身地や職種がばらばらの30人が南極で生活することの大変さ、そこから得た多様性への考え方、お互いを尊重することの意味など改めて気づいたことも多かったといいます。
南極での生活は日本とかけ離れていて非日常の世界と思っていましたが、ごみの問題や人間関係のことなど普段の生活につながる学びや気づきにあふれていると感じました。この本を読んで南極とのつながりを感じるとともに、暮らしのヒントを見つけてもらえるといいなと思います。


今日も南極で任務にあたる観測隊員の方々に“ご安全に”という気持ちを込めて今回のよむとすを終わりにします。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。