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よむとす No.305 コールデコット賞

[2023年10月15日]

ID:1058

コールデコット賞

上郷図書館 木下 陽子

コールデコット賞は、アメリカで前年に出版された絵本の中でもっとも優れた作品に贈られている賞です。「現代絵本の幕開け」「現代絵本の父」と言われているイギリスの絵本作家コールデコットの業績をたたえて、1937年にアメリカ図書館協会によって賞が創設されました。

『ランドルフ・コールデコット 疾走した画家』

『ランドルフ・コールデコット 疾走した画家』

レナード・S・マーカス/著 灰島 かり/訳 BL出版 2016年5月

この本はコールデコットの伝記です。コールデコットは、1846年にイングランドのチェスターに生まれ、1886年に旅先のアメリカで39歳という短い生涯を終えました。
彼が生きた時代は日本でいうと幕末から明治初期にかけてです。その頃のイギリスの新聞は現場の様子を写真ではなく挿し絵で伝えていました。コールデコットはその画力を買われ、数々の新聞や雑誌に挿し絵を掲載していました。
挿し絵画家として生計を立てていた彼が絵本作家として活動するようになったのは、エドマンド・エヴァンズに出会ったからです。エヴァンズはその当時イギリスで多色刷りができる著名な彫版師でした。彫版師は出版プロデューサーも兼ねており、コールデコットの絵を高く評価していたエヴァンズが彼に声をかけることで、絵本作家コールデコットが誕生しました。先進的な絵を描くコールデコットと高い印刷技術を持ったエヴァンズの出会いは、その後の絵本のあり方を変えていきました。
この本にはコールデコットの作品がたくさん掲載されています。また、図書館にはコールデコットの絵本の所蔵があります。ぜひエヴァンズが言うところの「気楽さと自由さ、ペンから紙の上に流れるままに描かれたような印象がある」(本文より)彼の絵をご覧になってください。
余談ですが、印税の支払いシステムはコールデコットがエヴァンズに交渉してできたものだそうです。

『エイモスさんがかぜをひくと』

『エイモスさんがかぜをひくと』(別ウインドウで開く)

フィリップ・C・ステッド/文 エリン・E・ステッド/絵 青山 南/訳 光村教育図書 2010年7月

では、コールデコット賞受賞作品にはどんな絵本があるのでしょう。飯田市立図書館でもおすすめブックリストに『かもさんおとおり』(別ウインドウで開く)『ちいさいおうち』(別ウインドウで開く)『かいじゅうたちのいるところ』(別ウインドウで開く)『ロバのシルベスターとまほうの小石』(別ウインドウで開く)などの受賞作品を選んでいます。
今回ご紹介するのは2000年以降の受賞作品の中で私が一番好きな絵本です。
エイモスさんは動物園で働いています。動物園ではおともだちとの時間をとても大事にしています。ある日、エイモスさんは風邪をひいて動物園へ行けなかったのですが…とお話は続きます。
私はこの絵本のとても柔らかな色彩の木版画と綿密な鉛筆画で描かれている絵が好きです。絵だけでもストーリーを読み取ることができます。また、細部にちょっとした工夫が施されていて、気がつくと嬉しくなります。それらの要素が優しいお話とあいまって、心に寄り添ってくれる絵本だと思います。

この他にも図書館にはコールデコット賞を受賞した絵本がたくさんあります。また、一部の本は原書も所蔵しています。手に取って楽しんでみてください。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。