ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

スマートフォン表示用の情報をスキップ

よむとす No.270 本は想像力の起爆装置です

[2022年4月15日]

ID:915

本は想像力の起爆装置です

中央図書館 瀧本明子

 

人が実際に体験できることは限られていますが、本の世界には数えきれないほどの体験があふれています。本を読むと、読んだ世界が自分の体験になる。体験することで、知らなかった世界やひとの気持ちを知ることができる。

今世界で起こっていることを考えても、身近な生活や仕事の中でも、広い世界を知り人の気持ちを理解する「想像力」こそが大切であると思うのです。


『やんごとなき読者』

『やんごとなき読者』 (別ウインドウで開く)

アラン・ベネット/著 市川恵里/訳 白水社 2009年3月

もしエリザベス女王が読書に夢中になったら…。

ある日、英国女王エリザベス2世は、飼い犬が吠えかかったことを詫びるため、宮殿の裏庭に停まっていた移動図書館車に足を踏み入れました。それまで読書にはあまり興味のなかった女王が、そこで一人の少年と出会い、義務感から1冊の本を借りたことをきっかけに本を読むようになります。読書の喜びを知り、次第になくてはならないものになって、公務に影響が出るほどに…。

女王の変化を快く思わない秘書の、「陛下にも暇つぶしが必要なのはわかりますが」との言葉に女王は、「本は暇つぶしなんかじゃないわ。別の人生、別の世界を知るためのものよ。もっと暇がほしいくらい」と反論します。「本は想像力の起爆装置」は、女王の言葉です。実際に女王は、読書することで前よりも人の心がわかり、他人の身になって考えることができるようになりました。

終盤、女王の読書はある行動へと変化します。

 

英国女王という、その生活は想像もできないような人物を描いた小説ですが、人には理解されない孤独を抱えていたり、読書によって変わっていく姿に、やんごとなき方の内面に触れたような思いがしました。


『100万回死んだねこ-覚え違いタイトル集-』

何かで聞いたあの本を読みたくて図書館へ来てみたものの、タイトルをはっきり覚えていない、どうやってさがそうか?そんな経験はありませんか。そんな時はどうぞ、遠慮なさらず図書館にお尋ねください。私たち司書が一緒にお探しします。

この本は、福井県立図書館で実際に尋ねられた、うろ覚えだったり間違えて覚えておられたりしたタイトルを集めた“図書館あるある本”です。

角田和代の『八月の蝉』-正しくは『八日目の蝉』、『ストラディバリウスはこう言った』-正しくはニーチェの『ツァラトゥストラはこう言った(かく語りき)』(別ウインドウで開く)、宮部みゆきの『ソロモンの秘宝』-正しくは『ソロモンの偽証』(別ウインドウで開く)などなど、ちょっと違っているけれど気持ちはわかる、愉快な覚え違いが満載です。覚え違いタイトルを見て次のページの本当のタイトルを考えるのも楽しい。ほとんどわかるという方は相当の読書家でしょう。

図書館では、タイトルをおっしゃっていただいてすぐにわからないときは、書いた人、内容、登場人物、いつ頃出版されたものか、本の大きさなど、ヒントになりそうなことをお尋ねしながらお求めの本を探します。この本?いやこの本かもしれないと、知識と想像力を駆使して探します。

当館で実際にあった事例の、ほんの一部をご紹介します。

「『犬のお婿さん』っていう本ないかな?書いた人は多和田なんとかっていうんだけど…」-ありがとうございます、“多和田”を覚えていてくださって!多和田葉子の『犬婿入り』(別ウインドウで開く)ですね。 「昔の名作で『野菊の人』っていう本」-例のあのセリフ、有名ですよね。本のタイトルは『野菊の墓』(別ウインドウで開く)です。

案外多いのが、「はとむくじゅうさんの本」というお尋ね。「椋鳩十(むくはとじゅう)」さんですね…。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。