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よむとす No.222 光の見え方は日々変わる

[2020年4月15日]

ID:744

光の見え方は日々変わる

中央図書館 田中 文子

建物が消灯した瞬間、夜空の月のまわりに光の環が現れて、驚いたことがあります。「月が暈をかぶる」という表現をその時はじめて知りました。月、星、太陽…同じ光でも、一瞬一瞬の自然現象やその時の自分の気分などで、見え方が日々変わるのは不思議なもの。光にまつわる3冊です。


『ひとすじの光』

『ひとすじの光』(別ウインドウで開く)

ウォルター・ウィック/文・写真 千葉 茂樹/訳 小学館 2019年7月


私の家の中の擦りガラスに、午前中だけ虹色の輪が浮かび上がります。どうやら光の出どころは、玄関扉の覗き穴。でも白い光が、なぜ虹色になるの?そんな時、タイミングよくこの本に出会いました。

光はなにからできているのか、三原色の話から、光の現象を易しく簡潔に解説している写真絵本です。光は透明な物質(空気やガラスなど)の中を進むとき、スピードが変わって屈折し、波長の長い赤い光・短い青い光などの7色に分かれ、私たちの目に届きます。だから虹色に見える瞬間があるのです。地球では青空や夕焼けが見られるけれど、光が屈折する要因の空気が無い月では、空は真っ黒…その理由も同じこと。同じ太陽光に照らされながら、見える色はまるで違う、仕組みを知るとさらに楽しい。日常の風景が少し変わるかもしれません(姉妹編『ひとしずくの水』(別ウインドウで開く)もあります)。


『深海魚チルドレン』

『深海魚チルドレン』(別ウインドウで開く)

河合 二湖/著 講談社 2011年6月


「私はお母さんと違う」―主人公・真帆は、母親の派手な社交性や無神経さが受け入れられず、親子関係はいつもちぐはぐ。入学してから友人との関係も変わってしまいうまくいかず、言葉が減っていく毎日です。そんな時見つけたのが、近所の市民センター裏手にひっそりと佇む「喫茶 深海」…まるで深い海の底にいるような穏やかな店内で、店主・素子とその子供たちに出会い、真帆は自分の居場所を見出し始めます。

無理に浅い海へ引き上げようとすると、内臓が破裂してしまう深海魚。その深海魚の中に、発光器でお互いに合図を交わす種が存在します。居心地の良い場所で、ときたま互いの存在を知らせ合う…深海魚と自分を重ね合わせた少女の、静かな闘いの物語。


『野尻抱影』

『野尻抱影』(別ウインドウで開く)

野尻 抱影/著 平凡社 2015年12月


「星の文人」と呼ばれた野尻抱影。明治生まれ、天文随筆家の彼は、東西文学や民俗を含ませた文筆で、星との出会いのエッセイを数多く残しています。花火を見ながらも、花火が消えた瞬間に現れる星に思いを馳せる…そんな無意識の瞬間を切り取った「遠花火」という作品から、私は彼の文章が好きになりました。軽妙かつ洒落た表現で綴られる文章は、時代を経ても読みやすく、これまた一つずつの題名が乙なのです!目次から、今日はこの一節…とページを開いてみませんか。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。