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よむとす No.221 その情報はウソ?ホント?!

[2020年4月1日]

ID:739

その情報はウソ?ホント?!

鼎図書館 関口 真紀

 

新型コロナウイルスの感染が世界中に広がり、生活や経済が不安に脅かされています。誰もが必死で情報を入手し、自分や家族の生活をどうしたらよいのか考えていることと思います。トイレットペーパーが今後不足するというデマ情報が流れ、デマだとわかっていても本当に必要な時になかったら困るから買い溜めしてしまう、ということもあるかもしれません。日々流れてくる情報は確実な情報ばかりでなく、変化する情報、あいまいな情報とさまざまです。私たちはこの情報に対し、どのように受け止め考えていったらよいのでしょうか。そのヒントになる本をご紹介します。


『その情報はどこから? ネット時代の情報選別力』

この本で扱われている情報とは主にインターネット情報のことです。スマートフォンの普及により、私たちはいつでもどこでも気軽にインターネットにアクセスすることができ、SNSにより情報を受けるだけでなく誰でも情報を発信することができます。私たちの日常生活は、いつのまにか行動や考えがインターネットに影響されている、とこの本は示唆しています。

例えばネット上で「これはまだマスメディアではニュースになっていない最新情報だ」という触れ込みを目にしたら、人に伝えたくなったりSNSに書き込みたくなる人も出てくるでしょう。ただインターネットの情報を鵜呑みにして行動することで、デマ情報を流してしまったり、人を傷つけてしまったりといった事件はいくつもあるそうです。また、私たちはもともと自分に都合の良いものばかりを見てしまう傾向があり、インターネットはその傾向をさらに加速させる装置がある、そのため自分が思いもよらなかった情報にいきあたる機会を奪われている、そういったことも意識すべきだと言います。

インターネット検索をして、もちろん正しい情報も出てきます。たくさん流れてくる情報から信頼性の高い情報を選択するために、まず「その情報はどこから?」と疑問をもつことが大事だと述べています。

そして、この本の最後の方に「図書館はなぜ必要なのか考えてみる」という章があります。その中で、いつでもどこでもスマホやタブレットから情報を入手できる環境の中で、図書館は何の役に立つのか?という問いに、インターネットは決して図書館にはなり得ないという答えを返した内容が紹介されています。この部分はぜひ多くの方に読んでいただきたいところです。なぜインターネットは図書館になり得ないのか、情報というものをどう受け止めていくのか、ぜひみなさん考えてみてください。


『流言のメディア史』

『流言のメディア史』(別ウインドウで開く)

佐藤卓己/著 岩波書店 2019年3月


この本は、新聞・テレビ・インターネットなどのメディアから伝達される「あいまい情報」を、さまざまな出来事を視点に分析しているものです。その出来事には、関東大震災、二・二六事件、といった歴史上のものから、元少年A『絶歌』出版や図書館での『アンネの日記』連続破損事件、津久井やまゆり園の障害者殺害事件など最近のものにも触れています。面白いのは、「あいまい情報」を悪いものとしていないところです。

著者はメディアから伝達されるあいまい情報、「メディア流言」はなくなることはないだろうと言います。それは、「社会変動にともなう揺らぎの中で人々がストレスと不安の解消を求めて行うコミュニケーションの所産であり」、現代メディア社会を構成するものであるからだそうです。そして、フェイクニュースやメディア流言を排除することは次世代AI時代にはできるだろうが、その社会は良い社会と言えるのか、客観的で信頼できるAI制御の情報空間で人間は本当に幸せに暮らせるのだろうか、と疑問を投げかけています。AIなら「誰も不満を口にできない」客観的で正確な評価がされていくのであろうが、その「誰も不満を口にできない」評価の存在こそが問題なのではないだろうか、そう考えるとメディア流言の存在を否定することはできないということです。メディア流言はあふれているものとして受け入れ、あいまい情報に耐える力が必要だと著者は言います。

新型コロナウイルスの関係で不安が続き、その不安ゆえ「あいまい情報」がどうしても流れてしまうものなのかもしれません。その中で生活に本当に必要な情報をどう入手していくのか、ひとつひとつの情報に向かい合うことが大切だと考えさせられました。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。