ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

スマートフォン表示用の情報をスキップ

よむとす No.214 ことばを学ぶ

[2019年12月15日]

ID:715

ことばを学ぶ

上郷図書館 小原文香

 

図書館では、毎年文章講座を開催しています。この講座は一年間の連続講座で、月に1回、講師の先生から文章の書き方の講義や、作文の添削指導を受けることができます。受講生の皆さんに受講のきっかけをお聞きすると、「仕事や地区の役員で文章を書くことになった」「書き残したいことがある」「何でもいいから新しいことを始めたい」とさまざまですが、意欲のある皆さんが一緒に学ばれています。今回は、文章講座で案内した本をご紹介します。


『日本人の愛したことば』

『日本人の愛したことば』(別ウインドウで開く)

中西 進/著 東京書籍 2011年9月



著者は新元号「令和」の考案者といわれる中西進さんです。この本は著者の1993年以降の講義やコラムをまとめた本で、「ありがとう」「いのち」「感じる」等のテーマに分かれています。著者曰く、「ことばを手掛かりとして、日本人の生き方を自由に語ったもの」で、日本を代表する文学者の人生経験や知識が詰まった一冊です。名作・名画・名句を挙げ、解説に加え著者独自の解釈も述べられています。

知見の広さに圧倒されますが、論文というほど固い文章ではなく読みやすいのではないかと思います。例えば、「ありがとう」のテーマでは、なぜ外国人の講演では必ず最後に「サンキュー」と言うのか、日本語の「ご清聴ありがとうございました」とのニュアンスの違いが語られています。感じていることを読み手や聞き手に伝える技術も勉強になります。


『子ども版声に出して読みたい日本語1 どっどどどどうど 雨ニモマケズ(宮沢賢治)』

元の本は2001年に発行されている大人向けの本です。この子ども版1巻では宮沢賢治の著書『風の又三郎』(別ウインドウで開く)『雨ニモマケズ』(別ウインドウで開く)等から抜粋された文章にふりがながふられ、簡単な解説と挿絵が添えられています。このシリーズは全部で12巻あり、2巻では正岡子規や松尾芭蕉らの俳句、6巻では『枕草子』や『平家物語』などの古典が取り上げられています。1冊30ページほどで、名文を手軽に学ぶことができます。

誰もが知っている “名作”と呼ばれる本を手に取っても、「長い」「旧字体で読みづらい」等の理由で、読破できなかったことはありませんか。…残念ながら、私はあります。そんな時、子ども向けの本が活用できます。専門家により要点を絞り、易しい言葉で説明されているので読みやすく、入門編としておすすめです。文章講座でも、毎年いわゆる“名文”といわれる文章の一部を扱います。読み続けられてきた文章から、表現方法を学ぶことができます。

私は小学生の頃、毎朝ホームルームで模造紙に大きく書き出した名文をクラス全員で音読しました。宮沢賢治の『雨ニモマケズ』もその一つです。文章の深い意味は分からず、暗唱してやろうという一心で読んでいたのですが、ことばのリズムは今でも体に残っています。

学生時代は勉強に苦手意識がありましたが、社会に出るとその機会のありがたさに気づきます。ことばの学びは終わることがなく、文章講座に臨まれる受講生の皆さんの姿に感銘を受けています。一人で学ぶのは大変でも、仲間がいれば続けられます。図書館が市民の皆さんの集う学びの場所になれば幸いです。



よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。