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よむとす No.208 いつか、そのとき

[2019年9月15日]

ID:698

いつか、そのとき

鼎図書館 玉置 郁子

 

子ども達が夏休みの間、図書館では、働くご両親に代わってお孫さんの面倒をみられているおじいさんやおばあさんの姿をよくおみかけしました。皆さん同様に「年寄りには大変なぁ…」とおっしゃりながらも素敵な笑顔でお孫さんたちのことを見守っておられたのが印象的でした。そんな日常の中で思い浮かんだ本を紹介したいと思います。


『ことことこーこ』

『ことことこーこ』(別ウインドウで開く)

阿川佐和子/著 角川書店 2018年9月


最初は阿川佐和子の小説です。表紙のやわらかなイメージとは違い、物語はいきなり娘たちに向かってお父さんが「母さんは呆けた…」と3回言い放つハードな場面で始まります。そして、娘の介護と仕事の両立、家族との意見の衝突に悩む姿などが描かれていきます。そして、ものわすれ外来や徘徊するシーンなど所々に“介護される側”である母の語りでその時の気持ちが書かれていて、切ない気持ちになりました。

いつかは誰でも介護する側や介護される側、あるいはそういう環境にある知人や友人を支える立場になるかもしれないと思うとますます重たい気持ちになりがちですが、この小説は、母と娘の明るい会話のやり取りや周りの人たちの思いやりに大変気持が救われます。そしてこの本の魅力はもう一つ、実際に作ってみたくなるような料理のレシピが出てくるということ。「カレーは冷蔵庫のお掃除屋さん」とはどういうことか、ぜひ読んでみてください。最後にタイトルにも結び付いていき、全体的にホッとできる一冊です。


『エマおばあちゃん』

『エマおばあちゃん』(別ウインドウで開く)

ウェンディ・ケッセルマン/文 バーバラ・クーニー/絵 もきかずこ/訳

 徳間書店 1998年7月


次は絵本を紹介します。ひとり暮らしのエマおばあちゃん。ふだんはしましま猫の<かぼちゃのたね>が話し相手です。72歳のお誕生日の日、子どもやたくさんの孫たちから素敵なふるさとの絵をプレゼントされます。けれどその絵を見れば見るほど自分の心の中にあるふるさとの風景との違いを感じ、ある日エマおばあちゃんは行動を起こすのです。

この絵本ではエマおばあちゃんの寂しさや、家族に対する気遣いなどが感じられますが、それ以上に、エマおばあちゃんの温かさの伝わる一冊であり、このように年を重ねられたらいいなぁと思いました。


『免許返納セラピー』

『免許返納セラピー』(別ウインドウで開く)

志堂寺和則/監修 講談社 2019年7月


最後に、最近図書館に入った本を紹介したいと思います。

高齢者ドライバーを親に持つ子どもたちに向けた「免許返納」に関する本です。近頃よく耳にする高齢者の車の運転免許返納という問題はそれぞれの地域の交通事情や利便性、家族構成によって大きく違ってくることなので簡単に答えの出るものではないこと、運転免許証は本人にとってはただのカードではなくプライドや思い出の詰まった人生の宝物であること、そして、大切な親を被害者にも加害者にもしたくないという共通の思いが根底にあるということを読んでいて再認識できます。

誰かのためにこの本を活用するのもありですが、いつかおとずれる自分のその時のために一読の価値があると思います。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。