中央図書館 藤田 若菜
少し時間が空いたとき、何をして過ごしますか?
スマホで時間をつぶすこともありますが、私は本を読んで過ごすことが多いです。でも長編を読むには時間が短い・・というときには短編小説が重宝します。ここではサクッと読める短編小説を紹介したいと思います。
『サラバ!』や『まく子』で知られる西加奈子さんの短編集です。実は西さんの本は始めて読んだのですが、短編ということもありあっという間に読んでしまいました。
主人公は女子高生やOL、モデルなど幅広い年齢層の女性がそれぞれ悩みを抱えて生きています。そしてどの話にも主人公に“おまじない”のような言葉をくれるおじさんがいます。
私のお勧めは「孫係」。主人公は小学生の女の子。女の子の家族は一ヶ月だけおじいちゃまと暮らすことになります。女の子はひんやりとした感じを持っているおじいちゃまが苦手でした。そんなある日、誰もいない家の中で「ひとりになりたいなぁ」と女の子がつぶやくと物音が。隣の部屋にいたおじいちゃまがほっとした表情で「私もです。」と言い、ある提案をします。
「係だと思いましょう」
「係だと思ったら、なんだってできるんです。」(本文より)
この提案でおじいちゃまと過ごす残りの日々も楽しいものになり、女の子の心境も変化していきます。
何気ない一言、必ずしも助けになる言葉ではない、意図して言った言葉でもない、そんな言葉で主人公達は元気になったり気持ちが軽くなったり救われたりしています。
まるで自分の背中も押されているような、そんな気持ちになる一冊です。
「赤ずきんちゃん」や「ジャックと豆の木」など有名な話19編のおとぎ話が収められた短編集です。
子どもの頃に読んだ慣れ親しんだ話とは少し違った解釈がされていて、違うお話を読んでいるようでした。
一話一話がそれほど長くなく、読みやすいのであっという間に読み終えてしまいました。もちろんどのお話から読んでも大丈夫なので、好きな話から読んでも楽しめます。怖い話が苦手な方は目次にある印を参考に避けて読むことができます。
そして、案内人(案内猫?)のチェシャとチェッコは挿絵を描いているアーサー・ラッカム氏の飼い猫がモデルになっています。挿絵と一緒にこの二匹の可愛さもご堪能ください。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。