鼎図書館 関口 真紀
平成から令和へ時代が変遷していく中、未来の私たちは本を読んでいるでしょうか。さまざまな課題をかかえる現代社会の中で、時に孤独や不安を感じ、時に誰とも会いたくなくても、本を読むことで励まされたり、前向きになれたりすることがあります。どんな時代になっても、本を読み、人と話し、考え、自分の人生を自分の足で歩んでいきたいものです。今回は、人の人生観に触れる、じんわりと前向きになれる本を紹介します。
「不登校新聞」という新聞が発行されているのをみなさんご存じでしょうか?不登校の体験談、フリースクール情報、進路情報などを当事者視点で教えてくれる新聞だそうです。その「不登校新聞」の中で、最もよく読まれているインタビュー記事をまとめたものがこの本です。
内容は、樹木希林、荒木飛呂彦、リリー・フランキー、羽生善治、辻村深月、茂木健一郎といった多彩な有名人に、不登校・ひきこもりの経験者が聞き手となって本当に聞きたいことを聞くという形をとっています。「ふつうとの付き合い方」、「不安がる自分を否定しない」、「生きつづけなきゃもったいない」など深い人生観に触れたことばがたくさん詰まった内容になっています。思春期の子どもに関係なくどんな人が読んでも、有名人たるその人をつくっている根底にあるものを知ることで、自分の生き方を振り返り、自分は自分でよいのだと思うことができます。
この本は、人生は自由だよ、世界は魅力に満ち溢れているよ、自分を信じて生きていくことを楽しもうよ!と背中を押してくれる本です。
昨年5月に「だるまちゃん」シリーズなどでおなじみの絵本作家、かこさとしさんが亡くなり、大きなニュースになりました。この本はそのかこさとしさんが88歳の時に書かれた自伝的エッセイです。かこさんが絵本作家になった道のりや、子どもたちから学んだこと、ご自身の家族のことなどが記されています。この本に書かれたかこさんのことばは、子どもたちへの敬意や愛情とともに、社会に対する厳しさを含んでいます。
厳しさの根底にあるのは、戦争でした。19歳で敗戦を迎え、特攻で亡くなった同級生もいる中、戦中と戦後でガラリと態度を変えた大人たちに失望し、大人は信用できないから子どもたちのために役に立ちたい、子どもたちには、ちゃんと自分の目で見て、自分の頭で考え、自分の力で判断し行動する賢さを持つようになってほしい、その手助けをしよう、そういった強い思いがあったことをこの本で知ることができました。
かこさんの願いはこの本の最後にも記されています。「子どもたちには生きることをうんと喜んでいてほしい、この世界に対して目を見開いてきちんと理解して面白がってほしい、自分たちの生きていく場所がよりよいものになるように、うんと力をつけて次の世代によりよいかたちで手渡してほしい。」
まずは私たち大人が、子どもたちの手本としてそうありたいものだと思います。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。