中央図書館 樋本 有希
中央図書館に“たべものエッセイ”のコーナーがあることをご存知ですか?実は大変人気のあるコーナーなのです。また食べ物が出てくる小説も昔からたくさんあり、おでんやぜんざい、和菓子など、名作に華を添えた食べ物もいろいろあります。今回はそんな“おいしい読み物”をご紹介します。
おいしいものエッセイでファンが多い平松洋子さん。高級なグルメから街中で普通に出てくる食べ物まで、幅広い内容で人気があります。グルメブログとは一線を画す“たべものエッセイ”コーナーの間違いなく主役級です。
この本は日本各地の「すごい味」を紹介した2冊の本のうちの1冊。伝統的でありながら大きな挑戦を続ける味を紹介しています。ショートケーキ、あぶらげ、凍みこんにゃくなどの項目があるなかで、私は特に『しょっつる』の話が面白いと思っています。魚醤というのは世界中にあるそうで、その魚醤によって秋田の男鹿半島とイタリアの地方都市が出会ったエピソードとそのエピソードの陰にあるハタハタ禁漁への決断、復活の覚悟などなど。とにかくドラマティックなおはなしです。
おなかがすいているときに読んではいけない本です。ご注意を!
図書館に勤めるものとしてちょっと恥ずかしい…、私はおいしいものは大好きだけれど、ミステリーが少々怖い人です。ある時そんな話をしたところ勧められたのが、フレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」が舞台の“おいしくて”“人が死なない”ミステリー短編集『タルト・タタンの夢』でした。この『マカロンはマカロン』は第3弾。読みごたえ十分ないろいろな料理が出てきます。マカロン、マッシュポテト、豚足などが、人の心をドキッとさせたり、癒してくれます。だんだんとシェフがどんな人なのかわかってくるのも面白いところ。ミステリー独特のちょっとした後味の悪さが含まれる作品もありますが、全体としては料理にこもる人のやさしさをぐっと感じることができるあたたかいミステリーです。隠れたスペシャリテである“ヴァン・ショー”を飲みにビストロ・パ・マルに出かけたくなります。
“おいしい読み物”というならば、このユニークな1冊も忘れられません。韓国は老若男女問わず、詩が大好き。地下鉄のスクリーンドア、バス停の時刻表の後ろなど街中に詩が貼られ、ラジオをつければ詩の朗読が流れます。そんな国の詩人たちが、「自分のソウルフード」の詩を書きました。そこに、おいしそうな料理の写真・解説、レシピがついたよだれが出そうな本なのです。例えば『キムチ』という詩。韓国人なのにキムチを恋しく思わなくなってしまった…という一節で母との距離感を表現し、また例えば韓国の女性が出産前後に食べ、また誕生日には母の苦労を想って食べる『わかめスープ』で母への感謝を表現したり。36のお料理を読んで作って食べて!楽しんでください。ちなみにこの本を図書館に入れることになった時、どこのコーナーに入れるかなかなか悩みました。結果は…詩の本のコーナーではなく料理本のコーナーにあります!
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。