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よむとす No.189 現代人にとって身近(?)なものであり、未知なるもの

[2018年12月1日]

ID:618

現代人にとって身近(?)なものであり、未知なるもの

中央図書館 代田 智之

 

平成30年(2018年)は、明治元年(1868年)から起算して満150年の年の節目の年でもありました。日本各地で「明治150年」に関連した式典や展示、講演会などが開かれ、例年にもまして歴史を振り返る年であったと感じました。ここ飯田市において、明治に関連した建造物といえば、下久堅地区にある「旧瀧澤医院」などが有名です。

この西洋の文化や技術が導入されていく江戸から明治への西洋化の転換期の中で、衰退してしまったもの、忘れ去られてしまったものが多くありますが、消滅した代表的存在といえば、“刀”(日本刀)ではないでしょうか。

平成の今日、刀といえば美術品(骨董品)としての扱いがほとんどで、日常的に手にする機会はほとんどなく、刀を差して歩く人の姿も見かけません。しかし、小説やドラマ、テレビゲームには多くの刀が描かれているため、”刀”といわれれば、フォルムを容易にイメージすることができると思いますが、果たしてそのイメージは正確でしょうか。

現代を生きる我々にとって近くて遠い存在になってしまった刀について書いた本を紹介します。


『刀の明治維新 「帯刀」は武士の特権か?』

武士(侍)というと、みなさんはどのような姿をイメージしますか?

ほとんどの人は羽織と袴を着て、大小の2本の刀を差している姿を想像するかと思います。しかし、もともと武芸と言えば「弓馬の道」と言われるように、日本の中世における戦闘は弓矢が主な武器でした。また、種子島(火縄銃)が伝来すると戦い方も大きく変化してきます。このような状況の中で、なぜ刀が明治維新まで残り、日常的に帯刀されていたのか。また、刀狩りなどによって武士の身分以外において帯刀が禁止されている中で、刀を帯びて生活していく者たちの姿。そして、なぜ近代明治まで残っていた帯刀という習慣がなくなってしまったのか、その理由がこの本には記されています。


『日本刀・刀装事典 目の眼ハンドブック』

実は刀って、ずっと同じ形ではなかったんです!

時代によって刀身の反りがあったりなかったり、切先の幅が変わったりしており、大陸から伝来した直刀の時代から、現代にいたるまでのそれぞれの時代における刀の形態の変化(刀剣史)について説明されています。

その他、刀の各部分の名称や保存方法(手入れの仕方)についても簡単に解説されています。刀に対する基本的な知識を得たい方にはお薦めの1冊です。


『刀に生きる 刀工・宮入小左衛門行平と現代の刀職たち』

ここまでの2冊は刀に焦点を当てたものでしたが、この本は“刀を作る人”の本です。

この本は、聞き書きによって現代に生きる刀工、刀職たちの生い立ち(刀に対する出会い)や製法・作業の紹介などが記録されています。今までは知らなかった工程を知ることで、イメージの中で完成した“刀”であったものが分解され、刀鍛冶以外にも研ぎ師や鞘師、柄巻師など、それぞれの職人の手を渡り、それらが合わさって初めて1口の刀という形態をとるのだと実感することができます。

小さな細工1つをとっても伝統の技術が込められています。博物館の展覧会などに行って実際の刀に触れたとき、作った人に思いを馳せて、鑑賞してみてはいかがでしょうか。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。