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よむとす No.188 子どもには癒されます。

[2018年11月15日]

ID:615

子どもには癒されます。

鼎図書館 玉置 郁子 

鼎図書館は小さな建物です。中央図書館や上郷図書館と違うのは入り口で靴を脱いで上がることです。「めんどくさい!」と思うかもしれませんが、そのおかげで小さな子どもを連れてきた方は子どもをどこでもお座りさせたり、ちょっとハイハイさせたり、つかの間でも手を空けて本を見たりすることができます。そして、ちょうどその場に居合わせた人も子どもの姿に目を細めます。そんな時に感じるのは、子どものしぐさや言葉は人を穏やかな気持ちにさせてくれるということです。そんな子どもの様子を描いた本を紹介します。


『おおきな おおきな おいも 鶴巻幼稚園・市村久子の教育実践による』

おおきな おおきな おいも(別ウインドウで開く)

赤羽末吉/さく・え 福音館書店 1972年10月


表紙に何やら紫色の大きな生きもの(後でわかりますが)と、それに登る小さな子どもたちが描かれたインパクトのあるこの本は多くの人が読んだことがあるかと思います。おはなし会などでもこの表紙を見ただけで、「しってるぅ!」「よんだことあるぅ!」という声が子どもたちからあがります。しかし読み進めていくうちに、「まだまだ、まだまだ」と続くサツマイモの絵や、いろいろなものに姿を変えるサツマイモに皆引き込まれていきます。出てくる色は紫色だけであとは線画というシンプルなものですが、ひとつひとつに動きや表情があってそれらをじっくり見るのも楽しいですし、「それからどうするの?」とさりげなく声をかけている先生の姿にも心ひかれます。

子どもたちの想像の世界が感じられてワクワクする素敵な一冊です。


『ハンバーガグー!』

『ハンバーガグー!』(別ウインドウで開く)

てぃ先生/著 ベストセラーズ 2016年10月


この本は現役の保育士が日々の仕事の中で見たり聞いたりした子どもの言葉を、保育園の一日を追っていく形でまとめたものです。単なる言葉を挙げただけではなく、その前後の子どもの様子やエピソード、その時の先生方の気持ちなども細かく書かれています。例えば外遊びの時間、先生のお話を聞いている最中に一人の女の子がいきなり木の近くに行きその上で鳴いているセミに向かって「先生がお話してるから、シーッ‼してね」と言ったり、またある時は、雪がほんの一瞬降ったのにたちまち溶けてしまってその雪を見ることのできなかった子が「(雪が)寒いからお家に帰っちゃたんだ!」と言ったりします。本当に素敵で豊かなエピソードが満載です。それらは、日頃から交流のある保育園の園児たちが鼎図書館の横を通る時など、私たちが気付いて窓を開けて手を振ると、「これから遠足に行くの~」とか「稲刈りに行くの~」と元気に答えてくれる姿と重なります。

保育園のお子さんやあるいはお孫さんの姿を思い浮かべながら読んでみるのもいいかもしれません。あわせて、てい先生の前作『ほぉ…、ここがちきゅうのほいくえんか。』(別ウインドウで開く)(ベストセラーズ 2014年9月)も楽しい一冊です。


『ちいさい言語学者の冒険』

『ちいさい言語学者の冒険』(別ウインドウで開く)

広瀬友紀/著 岩波書店 2017年3月


これは言語学者でもある著者が、私たちがごく当たり前に使っている日本語について、幼少期の言語獲得の過程をおもしろいエピソードを交えて解説・推察している本です。例えば平仮名に興味を持ち始めた子どもに対して「“た”にテンテンをつけたら何という?」と尋ねると“だ”と答えられるけれど、同じように“は”はどうかと尋ねると答えられないのが普通なのだということ。また、「トウモコロシ」や「カニニササレテチガガデタ」などのよくある子どもの言い間違えもなぜそうなるのか分析しています。この本を読んでいて、実際、よく鼎図書館に来ている赤ちゃんが、ある日「わんわん」とはっきり言えるようになったので言葉の成長の速さに驚いていると、そのお母さんが笑顔で「何でも「わんわん」と言うんですけどね」と言っていたのを思い出しました。この事は本書にも解説されていることですが、まさに著者のいう「言葉を覚える冒険の途中」なのだそうです。

このように、子どもの言い間違いや、ちょっと生意気だと思える口答えも子どもなりに一生懸命に考えている冒険の途中だと思うと、今よりもっとおしゃべりが楽しめるかもしれません。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。