鼎図書館 田中 文子
毎日図書館のカウンターに立っていると、利用者の皆さんの日々はとても忙しそうです。
部活、仕事、介護その他もろもろ。
頭いっぱいになった時、本が頭の整理を手伝ってくれることもあります。全文読まなくていいんです。・・・と言うと作者の皆さんに怒られそうですが、一文でも引っかかればその人にとって必要な本だったわけだからOKさ、と一司書として思います。そんなことで、最近頭の整理に役立った本をご紹介します。(紹介する時は、ちゃんと全文読んでいますよ。)
最後まで夢中で読んだビジネス書はこれが初めてでした。
notサクセスストーリー、not精神論、not起業家向け文章!
日々、ぼんやーりとやってみたいけどやっていないことはありますか?大きな夢でなくても、家事の効率化、体の意識改革、仕事のスキルアップ、なんでもいいのです。
著者の小林さんのやりたいことは、小さな定食屋を始めることでした。「始め方」「続け方」「伝え方」の順に自分の経験を伝えてくれますが、読み手がこれを実現できるように、手紙のような書き方にしてあります。
メニューは日替わり1食のみ、夜はおかずのオーダーメイドができる「あつらえ」、50分手伝うと1食無料の「まかない」など、既存に無いシステムを実現した食堂。でも彼女がしたことはアイデア集めではなく、徹底的に既存を学ぶことでした。1人経営の食堂です。あるもので考える、満点である必要はない、ただし黒字が前提、効率性を優先する…頭の堅い私は「それでいいの?」と驚くこともしばしば、でも一文ずつに確かな根拠。
彼女の食堂の理念は、「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」。そんな未来食堂に私も行ってみました。足を運ぶまで少しだけ勇気が要りましたが、店から出たあとは心もお腹も満腹でした(個人の感想です)。
今、みなさんは南信州に定住しています(仮住まいや単身赴任中の人もいます)。ところで、「定住」って何ですか。
何日同じところにいれば定住で、何日なら移動していることになりますか。
家庭を築けば定住?地区に馴染めば定住?就職すれば定住?
作者の村上さんは美術家です。25歳の時、「不動産」や「家」、型の決まったアルバイト生活の中に閉塞感を感じて、住み方を切り替えました。日本中、自作の家(素材は発砲スチロール!)を背負って歩き(イメージし辛い方は『家をせおって歩く』福音館書店(別ウインドウで開く) もご覧ください)、1年間で182回の引越しをしたのです。
自分探しではなく、ひたすら各地の人と交渉し、拒絶され、受け入れられ、家屋を見ながら、そもそも「家ってなんだ」を突き詰めて整理して発表している、あくまで美術家です。2度3度の移動生活を続けている彼ですが、こちらは1度目の移動中の日記をまとめた1冊です。他人に見られるために書いてあるとしても、彼の毎日の頭の中。なんとも濃ゆい…。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。