ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

スマートフォン表示用の情報をスキップ

よむとす No.179 家族を支える

[2018年7月1日]

ID:565

家族を支える

中央図書館 中平憲一

病気になったとき本人が何よりつらいのはもちろんですが、それを見守り支える家族も回復を願い、一緒になってつらい思いをするものです。こうした家族の負担が少しでも軽くなることを願います。

『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』

『死にゆく患者(ひと)と、どう話すか』 (別ウインドウで開く)

國頭英夫/著 明智龍男/監修 医学書院 2016年10月


進行がんの治療を専門とする医師が、大学で「死に臨んだ患者を前にして何をどう話せばいいか」をテーマに行ったコミュニケーション論の講義録です。

授業では「告知」から「インフォームドコンセント」を経て「終末期」における医療者のコミュニケーションを扱っています。著者が監修などで関わったテレビドラマ「白い巨塔」や「コード・ブルー」の場面を題材に課題がだされます。学生がまとめたレポートや発表、討論の様子、柔軟な思考で挑戦する学生の姿が描かれています。

患者やその家族のとまどい、怒り、悲しみ、ときには非合理的な錯乱にどう向き合うか、臨床での生々しい実例を交えながら、著者が堅苦しくなく本音で話す血の通った言葉に引き込まれます。

とりわけ医療者と患者との関係は「契約」ではなく「信託」という言葉は、医療者でない私にも合点がいくものです。でも、自分がその立場に立ったときそう考えられるか自信はありません。コミュニケーションの齟齬(そご)を防ぎ、患者や家族の心の負担を軽減することへの医療に携わる方々の配慮、日ごろの鍛錬に頭が下がる思いです。

深刻なテーマを扱っていますが、コミュニケーションスキルを知るにも面白く、医療系テレビドラマの見方も変わるので気楽に手に取ってみてください。


『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り』

『精神障がいのある親に育てられた子どもの語り』(別ウインドウで開く) 

横山恵子・蔭山正子/編著 明石書店 2017年12月


精神障がいのある親に育てられ、現在は成人している子どもの立場の9人の体験が紹介されています。成人に至るまでのライフサイクルに応じて遭遇した困難と、主な支援機関による支援の現状や課題についてまとめられています。

精神障がい者を支える家族を、よくある親兄弟を中心にした見方から「子どもの存在」に焦点を当てています。

親の病気について知らされることは少なく、親の病気に気づきにくい成長過程の子どもは、幼少期から親を支える立場として多くの制限を受け困難に直面して生活しています。

精神障がいのある親に育てられた子どもは、親を支えて「しっかり者」に見えても、内面ではさまざまな生きづらさを抱え、成長した子ども自身も精神疾患のハイリスクな状況にあるといいます。

精神障がい者は、治療に結びついていない未治療の方の数を含めると、実数はとても多いと言われます。「親が精神疾患」といわれる子どもの数は更に拡大すると予想されます。この一冊は、日ごろ目にすることのない見過ごされがちな現実を教えてくれます。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。