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よむとす No.57 『日本の心、昭和の心』 2013年05月15日

[2017年6月8日]

ID:171

『日本の心、昭和の心』

鼎図書館 岡庭和子

なぜかこの頃、日本人を意識することが多い。社会情勢だろうか、不思議と愛国心がわいてきている。古き良き時代のしきたりや骨董または人について、面白い本が出ているので、日本の良いところを回顧してみたらいかがだろうか?

『ときめき老後術 一人暮らしの骨董ざんまい』

辛口ノンフィクション作家としての上坂氏は有名だが、この本は肩の力を抜いて読める。なぜか昔から陶磁器が好きだった著者、趣味なぞ持たないで生きてきたはずが、ふと気が付いたら思いがけない楽しみがあった。深夜に赤い船箪笥から古いお皿や小鉢をだして、至福の時間を過ごしているという。さすが上坂氏お目が高い、私にとって喉から手が出そうな骨董が、写真入りでエピソードとともに掲載されている。素人なのにいっぱしの骨董通を気取ってかかれているが、書かれている内容はユニークな人生論になっている。
お金と暇さえあればと思うのは、浅はかな素人のやっかみだろうか。

『鮮やかに生きた昭和の100人』

まさに昭和を生き抜いた100人が写真とともに紹介されている。どの人も気骨のある存在感のある人物たちだ。
京都にある「柳」古美術商の表札の文字は小林秀雄、看板は川端康成の手になる。小林秀雄がこの柳に訪れたのは、白洲正子の紹介による。小林は批評の世界では「美」と「もの」についてさまざまに厳しく考えておられたが、晩年夢中になった勾玉をいつもポケットに入れて楽しんでいる姿を想像するだけで、ほほえましい。また、鎌倉の庭に置くために求めた小さな五輪塔が、今は東慶寺の墓石となっている。
白洲正子の夫である白洲次郎は、GHQ高官に「従順ならざる唯一の日本人」と言われたほどの直言居士であった。天皇の代理としてマッカーサーにクリスマスプレゼントを届けたときに、軽んじた扱いを受けるや「いやしくも天皇陛下からの贈りものを無礼ではないか」と叱りつけている。遺言は「葬式無用戒名不要」であったという。町田にある旧白洲邸「武相荘」には、骨董好きであった白洲正子の趣味で集められた骨董の数々が展示されているという。一度は訪れたいと思っている。
その他、三島由紀夫、田中角栄、司馬遼太郎、など。どの生きざまに共感するだろうか。

『鳩居堂の日本のしきたり豆知識』

京都に行くたびに必ず立ち寄る店があるが、鳩居堂はその一つである。お香の匂いに包まれた落ち着いた佇まいの店に一歩踏み出した途端、京都を身近に感じる。和の香りがする文房具店である。
四季折々の伝統行事は、時間に追われながら生活を送る現代人に豊かな時の流れを感じさせられ、古くからある日本のしきたりは、人間関係を丸く育んでくれるものである。
季節の歳事、お祝い事、人生の節目、などいわれや風習についてわかりやすく書かれている。水引の由来には諸説あるが、聖徳太子の時代、遣隋使として隋に渡った小野妹子が持ち帰った荷物に紅白のひもがかけられていたことによるという。美しい写真が目に飛び込んでくる、日本を感じさせる本である。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。