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よむとす No.317 大切にしたい「節目」

[2024年4月15日]

ID:1108

大切にしたい「節目」

中央図書館 瀧本 明子

この春、小学校の卒業式と入学式に出席させていただく機会がありました。6年生の、将来を見つめる意志が感じられるような眼差し、新1年生のぴちぴち弾けるような音が聞こえてきそうないきいきした目。節目の時にぐんと成長する姿を目の当たりにしました。
竹の節も、強度を高めるためにあるそうです。節があるからしなやかに曲がるけれど折れない。また、節で細胞分裂して一気に伸びる(『大事なことは植物が教えてくれる』(別ウインドウで開く)稲垣 栄洋/著 マガジンハウス 2021年7月)そうです。節目は意識して大切にしたいものです。

『海べのあさ』

『海べのあさ』(別ウインドウで開く)
ロバート・マックロスキー/文・絵 石井 桃子/訳 岩波書店 1979年

まだやわらかい筍の節と節の間が詰まっているように、子供の成長は節目だらけといってもよいでしょう。これは、ある節目を迎えた女の子が主人公の、躍動感あふれる絵本です。
島に住むサリーは、朝起きると歯がぐらぐらしていました。はじめは心配しますが、お母さんから大きくなったからだと聞くと、空を飛ぶミサゴや海を泳ぐアビやアザラシにも歯が抜けかかっていることを誇らしげに話します。そして、ミサゴやアビにも歯があるのかしらと考えます。お父さんと一緒に行った修理工場やお店でも、みんなに「歯が抜けたの!」と伝えます。きっと目の前の景色がサリーにはきらきらと輝いて見えているのだろうと想像できます。大きくなることの喜びに満ち溢れている絵本です。
子供の世界は、日常の中に発見や喜びがたくさん詰まっています。大きくなることや学校へ入学することが待ち遠しく、誇らしく思えるような本を一緒に楽しみたいと思います。

『新訂 先祖の話』

『新訂 先祖の話』(別ウインドウで開く)
柳田 國男/著 小畠 宏允/監修リライト 田中 正明/校閲 石文社 2008年8月

図書館の調べもので比較的多いものに、年中行事や人の一生の中の行事のことがあります。 
先日も、「おせち料理を大晦日に食べるのはなぜか」ということを調べている方がいらっしゃいました。
ちょうどその時に図書館にいらっしゃった研究者の方が教えてくださったのがこの本です。“「日本人の一昼夜はもともと夜昼」という順序になっていて、1日は前日の日没から始まるもの。「年越しの御節」というのも前晩(大晦日)の夕飯時の事で、この時に一家総員で正式な食事をした”と記載されています。そうでしたか! “もともと”を知らないことの何と多いことか。
初版は昭和21年に発行された柳田国男の名著といわれる本です。日本人の先祖への信仰や死生観、家の在り方について書かれたものですが、今は多くの人に忘れられてしまった正月や盆行事などの内容や理由もはっきりと書かれていて、節目に行う行事には人々の祈りや願いが込められていることがわかります。
暮らしの在り様が大きく変わっても、長い間大切にしてきたその気持ちを知って、できるだけ伝えていきたいと思います。

『三千円の使いかた』

『三千円の使いかた』(別ウインドウで開く)
原田 ひ香/著 中央公論新社 中公文庫 2021年8月

冠婚葬祭やイベントのみが節目ではなく、自分の行先に悩んだり、立ち止まって考えたりする時も人生の大切な節目だということをこの小説が教えてくれました。
就職を機に一人暮らしを始めた貯金30万の美帆。結婚を機に仕事を辞め、子供の進学までに一千万を貯めるために奮闘している現在貯金六百万の姉・真帆。一千万の貯金はあるものの働きに出たいと考えている祖母・琴子。それぞれがあるきっかけから、自分の生き方や、そこに必ずついてくるお金について悩み、真剣に考えて行動します。
現実的な金銭問題が中心となっていて、私も思わず自分の貯蓄額を確認してしまいました。
ドラマになっていたとは知りませんでしたが、資産形成を考えている人にもおすすめの一冊です。

飯田市立中央図書館は、令和7年に開館110周年を迎えます。その節目の年に向けて、やってみたいことを一緒に考える「図書館カフェ」を、毎月開催予定です。ぜひご参加ください。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。