よむとす No.296 推す女
[2023年5月15日]
ID:984
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契約社員の琴美は年下の女性アイドルの推し活を断念し、父の介護のため東京から札幌へ帰ることを決めます。父は元塾講師で、生徒や娘たちにランクをつけており、琴美は出来の良い妹と比べられてきたため劣等感を抱いてきました。琴美は介護に悩む自分の状況を「よくあること」と片づけられてしまうことや、自分の家庭を持つ妹や友人との相容れなさに辟易とします。かといって、逃げることも大きな行動も起こせない中、琴美が推しのコンテンツに励まされる様子はリアルに感じられます。そして、推し活に理解のないと思っていた父の秘密には衝撃を受けました。
腐女子の由嘉里の推しは焼肉を男性に擬人化した作品です(作中に出てくる推しの設定や描写があまりにも緻密で、実在するのではないかと思うほどでした)。合コンで腐女子であることを勝手に公表され、居づらさに酔いつぶれたところを美しいキャバ嬢のライに拾われます。ライは「私はこの世界から消えなきゃいけない」と言い、自分はこの世界に存在すべきではないのだ、という死生観を持っています。由嘉里はその考え方に納得できず否定しますが、ライをとりまく人々と交流するうちに心境が変化します。幸せとは何なのか、推しがいて楽しいだけじゃダメなのか、固定概念にとらわれる主人公に自分を重ねてしまいました。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。
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