ページの先頭です

共通メニューなどをスキップして本文へ

スマートフォン表示用の情報をスキップ

よむとす No.272 詩の言葉に浸る

[2022年5月15日]

ID:923

詩の言葉に浸る

中央図書館 関口 真紀


詩には、忙しい毎日の中でも心をとめたり、気持ちが沈んだ時に自分を支えてくれる言葉がたくさん詰まっています。言葉の力は不思議です。詩の中の短い言葉に込められたイメージや行間にある世界をぜひ楽しんでください。


『日本語を味わう名詩入門 16 茨木のり子』


茨木のり子は、NHKの番組でも取り上げられていましたが、死後16年が経つ今も詩集が重版され、世代や国境を越えて多くの人を魅了している詩人です。代表的な作品に「自分の感受性くらい」、「倚りかからず」、「わたしが一番きれいだったとき」などがあります。どの詩を読んでも言葉が心に沁みる、背筋を伸ばし襟を正したくなるような凛とした作品ばかりです。そして同じ作品を何度読んでも、その時その時の自分の心に語りかけ励ましてくれる、そういった作品が多いのです。


「自分の感受性くらい」を読んで、最後の一句「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」に心を“ガツン”とやられた人も多いのではないかと思います。自分が叱られているような気持ちになるのですが、それがまた心地よく、モヤモヤした自分の心に喝を入れたいときはぜひ読んでみてください。ちなみに「ばかものよ」は作者自身が自分に向けて言った言葉だそうです。


茨木のり子の詩集は図書館に何冊もありますが、この本は私の好きな茨木のり子の詩が全て入っていましたのでご紹介します。私のおすすめは、「言いたくない言葉」と「落ちこぼれ」です。また、茨木のり子がどんな人物なのかご興味がある方は、『茨木のり子 自分の感受性くらい』(別ウインドウで開く)(「別冊太陽」平凡社)をあわせてご覧いただくと、人生の歩みに沿ってその時その時につくられた作品を読むことができておすすめです。


『蛙のうた 草野心平詩集』

『蛙のうた 草野心平詩集』(別ウインドウで開く)

草野 心平/著・画と書 北川 幸比古/責任編集 岩崎書店 1997年8月


「蛙の詩人」といわれた草野心平の詩集をご紹介します。草野心平は、私が学生の時に先生から「究極の詩がある」と紹介され、それ以後ずっと心に残っている詩人です。その究極の詩は「冬眠」という詩で、本文は「●」、これだけです。「まさに冬眠!」と感じる人もいれば、「なんじゃこりゃ」と感じる人もいることでしょう。感じ方は人それぞれ、自由です。


この詩集は、上記の「冬眠」も掲載されていますし、「●」という題名の詩もあります。擬音のみの詩や、改行がなくぎっしり言葉がつまった詩もあります。草野心平は蛙の目線で生と死を淡々と読み、自然の摂理を謳歌している独特な世界が特徴的で、その独特さゆえに理解の難しいところもあります。この本は編集の北川幸比古さんにより、やさしいものから難解なものへ順に掲載されているので、草野心平の世界に入りやすくなっています。様式にとらわれない自由さや、おおらかさの中にある秘められたもの悲しさ、といった草野心平の世界をじっくりと味わってみてください。



よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。