中央図書館 遠山 百合香
多くの人が暮らす“まち”には、生活していくために必要なたくさんの物や、建物や決まりなどが数えきれないほどあります。そしてまた、そこに住む人の数だけ、それぞれの生活があり物語があります。
今回は“まち”の本を紹介します。
高楼 方子/作 出久根 育/絵 偕成社 2017年10月
古びた建物が軒を連ねる古い石畳の通りがある旧市街。この本は、この街で暮らす人々の8つの物語が書かれています。
最初に登場する16歳の少女ピッパ・フィンチは、子守りのアルバイトを始めました。子どもの昼寝の時間には窓辺に椅子を置き、本を読んだり窓下の旧市街通りを見下ろします。人々を観察してはあれこれ想像を膨らませるのが大好きな少女です。
表紙の絵に描かれた街の雰囲気が素敵で手に取った本ですが、このピッパの話も心の和むような話かと思いきや…。
「社長の正体」は、<銀鈴商会>に勤める青年の話です。社員全員に慕われている社長が行方不明だというのに、青年は猫とのんびり暮らしています。そして、友達に「それ、じつはぼくのせいなんだよね。」と何か意味ありげに話します。
どこからが空想なのか現実なのかと思う不思議な話や少しゾクッとする話、幸せな気持ちで終わる話もあります。
この本を読んで、ピッパのように想像を膨らませて隠れたさまざまな物語に思いを馳せてみてください。
『超入門!ニッポンのまちのしくみ 「なぜ?どうして?」がわかる本』(別ウインドウで開く)
福川 裕一/監修 淡交社 2019年3月
本書のナビゲート役の先生と小学6年生の男の子と女の子のかけ合いを通して、素朴な「まち」の疑問「なぜ?どうして?」を解決していきます。
私は電柱や電線は地上にあるのが当たり前だと思ってきたため、「なんで日本の町は電柱・電線だらけなの?」はとても気になった質問です。第二次世界大戦で焼け野原となった町を建て直す時、地上に次々と電柱が立ちました。道路の下に埋める「地中化」の動きはさまざまな理由で進まなかったそうですが、現在では、電柱は災害時にとても危険だと言うことで、「地中化」の動きはあるようです。
町には歴史や地形の影響はもちろん、さまざまなルールがあり、それらが背景となって住む人が心地よく暮らしていけるような町ができているのだと改めて気づきました。
「東京駅の復元にかかった莫大なお金はどうやってつくったか?」「ビルの頭が同じくらいの高さでナナメに切られているのはなぜ?」など、気になりませんか?ぜひ読んで確かめてみてください。
三土 たつお/編著 実業之日本社 2016年4月
街角で普通に見かける何でもない物について、その写真付きで、楽しく面白く解説している本です。パイロン(カラーコーン)、タイヤ止め、マンホールの蓋、カーブミラー、ポストなどさまざまな物が取り上げられています。回収ボックス(自動販売機の脇にある空き缶のごみ箱)でさえ、実はこんなに種類があるのかと驚いてしまいます。各部名称と役割、「生態」まで書かれていて、例えば回収ボックスは「その姿は、まるで自動販売機と仲睦まじく歩く夫婦のようである」と擬人化され、おもしろく表現されています。
この本の最後には「フィールドワークにでかけよう」と街の観察の仕方が紹介されています。これを参考に街に出掛けてみましょう。今まで見ていたはずの物や場所が気になり、そして、何でもないものに目が向いてしまいます。
特別に知らなくてもいい事かもしれないけれど、知っていることで街歩きがとても楽しくなりますよ。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。