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よむとす No.262 どんな人?

[2021年12月15日]

ID:888

どんな人?

中央図書館 木下 陽子

 

本を読んでいてこの物語を書いた人って、この絵を描いた人ってどんな人かな?と思ったことはありませんか?今回は私の好きな作家、画家について書いてある本を紹介します。


『佐野洋子 あっちのヨーコこっちの洋子』

『佐野洋子 あっちのヨーコこっちの洋子』(別ウインドウで開く)

オフィス・ジロチョー/編 平凡社 2017年2月

絵本『100万回生きたねこ』(別ウインドウで開く)の作者、佐野洋子について書いてある本です。この本は主に佐野さんと交流のあった方々からのアンケート結果と佐野さんのエッセイからの引用文で構成されています。アンケート結果からは身近な友人・家族だからこそ知り得る姿や逸話を教えてもらえ、引用文からは本人が紡ぐ言葉で彼女の人柄を感じ取ることができます。

 私がこの本を読んで特に嬉しかったことは、私が彼女の絵本の中で一番好きな『おじさんのかさ』(別ウインドウで開く)の新事実が分かったことです。それは主人公のおじさんが当初は英国紳士風に描かれていたということ。この本のおかげで、書き直しを余儀なくされた時の様子を知り、未発表となっていた英国紳士風のおじさんの姿も見ることができました。

 また、この本の中で私の心に一番残ったのは、エッセイ『がんばりません』(別ウインドウで開く)からの引用文です。「人とめぐり逢うのも才能である。私に何の才能がなくても、人にめぐり逢う才能があったと思う。」(本文より)そう言いきれる佐野さんと周りにいた方々の間に素敵な物語がうまれていたことがうかがえ、心が温かくなりました。


『初山滋 永遠のモダニスト』

『初山滋 永遠のモダニスト』(別ウインドウで開く)

竹迫 祐子/編 河出書房新社 2007年11月

絵本『たなばた』(別ウインドウで開く)の挿絵を描いた画家、初山滋について書いてある本です。初山さんが描く童画や物語絵、携わった造本や教科書の仕事が分野ごとにまとめられています。作品には描いた当時の彼が置かれていた状況や様子も添えられています。

 私が特に惹かれたのは版画です。とても色彩豊かな作品です。厳選された色の組み合わせとシンプルな構造で描かれており余白部分も楽しめます。なお、初山さんが好んでいた版画の技法は「彫りすすみ」というとても根気がいる作業工程のものでした。この本を読んでいると、彼が何を描き、どう彩色し、どんな工程で進めていくのか考えながら手を動かしている姿が想像でき心が躍りました。

 作品以外にも、趣味のことや息子さんからみた初山さんのことなどが書いてあります。本の中のコラム「初山ファッション」には思わず笑みがこぼれました。「人が来るというと、わざわざ汚いドテラに着替えて、客を迎える。」(本文より)個性的なセンスをお持ちだったようです。


『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』

『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』(別ウインドウで開く)

トゥーラ・カルヤライネン/著 セルボ 貴子,五十嵐 淳/訳 河出書房新社 2014年9月

書名のとおりムーミンの著者、トーベ・ヤンソンについて書いてある本です。この本の原書のタイトルを邦訳すると『トーベ・ヤンソン 働け、そして愛せよ』です。そのタイトルについて触れている箇所があります。「トーベが人生の中で何よりも大切にしていたのは、仕事、そして愛だった。人生と芸術は不可欠であると考えていた彼女は、自分の人生を文章と絵で表現し、身近なもの-友人、愛する島、旅、自分の経験-を題材に、数多くの作品を生み出した。」(本文より)と。ムーミンや他の小説の登場人物のモデルにトーベさんの身近な人が多いのは、この考えがベースにあるからなのだなと腑に落ちました。

 なお、この本は全372ページ、厚さにして4cmあります。彼女の生い立ちから始まり、ムーミンや大人向けの小説、画家、演劇作家、舞台美術家等といった多種多様な仕事から垣間見える彼女の姿がテーマごとに書いてあります。また、彼女が大切に思っていた人たちと心を通わせた膨大な数の手紙から伝わる愛についても。トーベさんとじっくりゆっくり向き合える本です。

  

他にも、作家や画家について書いてある本が図書館にはたくさんあります。それらの本を通じてお好きな作家、画家を身近に感じてもらえると嬉しいです。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。