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よむとす No.255 声

[2021年9月1日]

ID:871

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中央図書館 森山 ゆり

 

胎児の耳が聞こえはじめるのは、5ヶ月頃からと言われています。一番聞こえるのは母親の心音や血液の流れる音など、母親の体の中の音。そして、母親の声は最も身近に聞こえる外の世界の音です。

今回は「声」に関する本を3冊紹介したいと思います。

『とわの庭』

『とわの庭』(別ウインドウで開く)

小川 糸/著 新潮社 2020年10月

主人公のとわは、生まれつき目の見えない少女です。眠りにつく時はいつも母さんの腕に抱かれ、母さんの心臓をすぐそばに感じながら、母さんの声で詩や物語を聞いていました。母さんは季節の巡りがわかるようにと、とわのために沈丁花や金木犀など、庭に香りのする植物をたくさん植えます。母さんはその庭を「とわの庭」と呼びました。そこには毎朝、鳥の合唱団が来て朝を知らせてくれます。

大好きな母さんとの幸せな日々が続いていましたが、ある日母さんは仕事にでかけたまま帰ってきません。その後は読み進めるのが辛くなってしまうような、とわの壮絶な年月が過ぎていきます。

ある時、とわは勇気を出して外へ出ます。それからは、家の中ばかりでは得られなかった素敵な人々との出会いや、図書館で録音図書を借りて本を読むという、日々の中での発見や楽しみも知ります。又、私が読み進める中で一番ほっとできた、盲導犬ジョイとの出会いもあります。

壮絶な日々を過ごしてきた彼女が前向きでいられるその根源には、幼いころの母さんとの濃く幸せなひとときがあるからなのだろうと感じました。母さんの名付けた「とわの庭」の木々や草花の香り、鳥の鳴き声などの自然から生きる勇気をもらい、周りにいる人々に救われる彼女も又、周りの人々を救い、勇気づけ、支え合います。そんな人生を送っていく姿に胸を打たれます。


『鳴き声から調べる野鳥図鑑』

『鳴き声から調べる野鳥図鑑』(別ウインドウで開く)

松田 道夫/文・音声 菅原 貴徳/写真 文一総合出版 2017年4月

私はこのところ、目覚まし時計がなくても起きられるようになりました。なぜかというと、1冊目に紹介した「とわの庭」のごとく野鳥の合唱団が来るからです。うっすら明るくなってくると「特許許可局、トッキョキョカキョク」と鳴く鳥、続いて「ギチギチギチギチ」とけたたましく鳴く鳥、(私は勝手にギチギチ鳥とよんでいます。)ベランダには雀が「チュンチュン」。春にしか鳴かないと思い込んでいたウグイスの声もしっかり「ホ~ホケキョ」と聞こえてきます。他にもいろいろな鳴き声が…。

はじめのうちはうるさいなぁと思っていましたが、毎朝聞いているうちにだんだん、またこの鳥が来ているなぁとか、この鳥がそろそろ鳴きだすぞ…と気になるようになり、いよいよこの鳥の正体は何だろう⁉と調べたくなりました。そこで手に取った本がこの本です。ここには出会いの多い野鳥たちの鳴き声についての解説が載っています。まず鳴き声にはいろいろな意味があることがわかりました。

代表的な鳴き方は“さえずり”でこれは求愛となわばり宣言の意味があるそうです。又、“地鳴き”という鳴き方も多く、これは存在を確かめ合うためだそう。

鳴き声がわかると種類の識別はもちろんのこと、鳥たちの気持ちを感じることができるので楽しいですね。この名前の鳥だったのか!とわかると写真を見て、この鳥がすぐ近くにいるんだ!とわくわくし、また明日の朝が楽しみになります。


『ひびけわたしのうたごえ』

『ひびけわたしのうたごえ』(別ウインドウで開く)

カロライン・ウッドワード/文 ジュリー・モースタッド/絵 むらおか みえ/訳 福音館書店 2021年2月

最後に紹介するのはカナダの絵本です。

冬の朝、カナダに住む6歳の少女がスクールバスに乗るために、長い道のりをひとりで歩いていきます。朝のまだ暗い森の中はぶきみな音がしたり、誰かが見ている気がしたり…。不安でいっぱいの少女が思いついたことは、歌をうたうこと!その瞬間あたりがパーッと明るくなります。真っ暗な森から明るくなった絵本の中の世界が、少女の心を表しているようです。

寒い上に遠い道のりを歩いていく少女は、ずっと歌をうたい続け、自分を励まします。そしてやっとたどりついたバスに乗った時の暖かい空気や、友だちと会えた時の安心感が少女の表情から伝わってきます。

著者は、この本に触れた読者が人生の節目節目でこの物語を思い出し、どんなに暗い状況でも前を向いて進んでいく応援歌として捉えてくれたら嬉しいと語っています。

翻訳者・村岡花子さんの孫の村岡美枝さんの訳です。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。


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