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よむとす No.254 海を渡り、ひろがる味

[2021年8月15日]

ID:867

海を渡り、ひろがる味

中央図書館 樋本有希

『海を渡った故郷の味』(別ウインドウで開く) 難民支援協会/編著 トゥーヴァージンズ 2020年2月

『ハンメの食卓』(別ウインドウで開く) NPO法人コリアンネットあいち/編著 ゆいぽおと 2013年10月

『韓国かあさんの味とレシピ』(別ウインドウで開く) 八田靖史/著 誠文堂新光社 2020年3月

『スパイスカレーを作る』(別ウインドウで開く) 水野仁輔/著 パイインターナショナル 2019年6月

 

この現代で。戦争でもなく。外国と自由に行き来できないなんて。

 

誰が予想したでしょう。でももしかしたら、このコロナ禍も外国が昔よりずっと身近なものになった一つの印なのかもしれません。

 

日本もいつの間にか、たくさんの外国出身の方と一緒に暮らす国になりました。飯田も同じです。国内でも自由に動けない今。外国出身の方たちは故郷に帰ることも難しく、普段だったら航空便で行き来する荷物すら、簡単には届きません。やっぱり恋しいのは「味」。ホームシックの中、そんな話をしてくれた方がいました。

 

近年、外国料理の人気は上がっていて、例えばシュクメルリとかダルカレー、チーズタッカルビなど、ごく普通に家で食べているものや、若者が食べるジャンクフードが紹介されるのは、在住外国人が増えてきたことも影響しているのだそうです。

 

来日したきっかけは人によってさまざま。『海を渡った故郷の味』(別ウインドウで開く)は、いわゆる難民と呼ばれる人たちが、教えてくれた世界各地のレシピを集めたもの。冒頭のチン族の“スパイシーサラダ”は香味野菜がたっぷりで、いくらでもトマトが食べられそう!カレン族の“サケのスイートバジル和え”は片栗粉や玉ねぎなど常備の材料に、スーパーでちょっとスパイスを買い足せば、焼いて混ぜるだけで超ごちそう!エチオピアの“青野菜とフレッシュチーズのソテー”は未知の味ながら…美味しくないわけがない!というレシピ。材料は半分で、スパイスバターは省略してやってみました。うまい。このレシピ、来日した当初チーズが買えなくて自作して以来、いつもチーズから作ることになって、より伝統レシピに近づいたものを食べることになったのだそう。でも野菜は日本の小松菜、というくだりもなんだか面白い。

 

小松菜は日本の伝統野菜の一つだけれど、在日コリアンの皆さんもキムチにしたりしてよく使う。『ハンメの食卓』(別ウインドウで開く)は在日コリアンの高齢者のために、デイサービスで提供しているランチのレシピ集。隣の国なのに、意外と手に入りにくい材料をいろんな工夫で完全に日本の材料に置き換えてみた。そしたらなんだか最近の韓国の若者があまり作らなくなった“懐かしレシピ”が集まった様子。確かにシンプル。味付けもニンニクやゴマを使っているけれど、全部スーパーで手に入る。定番と言えば定番。「じゃがいもチヂミ」なんて今日の冷蔵庫の中身で出来そうです。

 

でもこのレシピたちはいわゆる「在日食」。今の韓国の作り方とはやはり違う感じ…。『韓国かあさんの味とレシピ』(別ウインドウで開く)は今の韓国の“お母さん”たちの味と物語。アメリカ生活を終えて、男の子二人のお腹を一生懸命満たしているジニかあさんがつくるカムジャジョン(ジャガイモチヂミ)は小麦粉を使いません。とっても簡単。今、日本で流行している韓国料理に一番近いのはパクかあさんでしょうか。日本で韓国に夢中になっている世代と同じ娘さんたちのためにつくるレシピ。もりもり食べる。東京、新大久保で人気があったヨンエかあさんが韓国に戻って作るふるさとの味は素材命。素材の準備にはとても手間がかかっているけれど、料理を始めたらあっという間に出来上がりそう。新大久保にあこがれる人が増えている。「韓国料理を食べに東京に行きたい!」なんて若者もいるらしい。新大久保の韓国料理はひとくくりにはできなくて、いろんな地方や世代の料理がごちゃ混ぜに集まる場所。そしてさらに今、新大久保はベトナム料理が人気を集めている様子。

 

難民生活を一緒に過ごす仲間のために。実習生生活を過ごす若者のために。料理上手な同胞が小さな食堂やスーパーを開いて、それがだんだん食いしん坊な日本人にも広がって、味の世界はどんどん広がっていきます。そしてそれが『スパイスカレーを作る』(別ウインドウで開く)のような、本場の人よりもその地の料理を熟知した料理家による本を誕生させます。日本人が、現地の人がなんとなく使っているスパイスを集め、分類し、メソッド化して誰でも作れるようにしてしまう。図書館でも大変人気がある本です。

 

おうちで。地域で。まだしばらく我慢が必要そうです。おうちごはんに飽きたら、いつものご飯にささっとスパイスひとふりいかがでしょう?ナスが余ったら〇〇〇をひとたらし。白飯が足りなくなるかも。外国は遠くなったけれど、おいしいものはずっと近くなっています。さあ読みましょう!食べましょう!図書館にヒントはたくさん用意されています。

よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。