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よむとす No.249 小さな図書館

[2021年6月1日]

ID:850

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小さな図書館

中央図書館 矢澤恵


飯田市の中央図書館の蔵書は40万冊。分館まで合わせると80万冊の本や資料があります。

今回、実在した2つの「小さな図書館」を紹介します。蔵書はそれぞれ8冊と数百冊。でも、この小さな図書館から得られた希望や救いは、想像できないほど大きなものだったのです。

(どちらも主人公は14歳。10代の皆さんにも同年代の実話として読んでほしい本です。)


『アウシュヴィッツの図書係』

『アウシュヴィッツの図書係』(別ウインドウで開く)

アントニオ・G・イトゥルベ/著 小原京子/訳 集英社 2016年7月

8冊しか本のない図書館、それはアウシュヴィッツ強制収容所の家族収容所にありました。そこは国際赤十字の視察団に「捕虜を人道的に扱っている」と見せかけるための収容所です。そして、ナチスによって教育も本も禁じられている中、この収容所には子どもたちのための秘密の学校と図書館があったのでした。

命がけで8冊の本を守る図書係の14歳の少女ディタが、この本の主人公です。

8冊の本は、世界を教えてくれる地図帳や歴史の本、人生を何十倍にも広げてくれる文学、図形や数字の並ぶ幾何学、フロイトの精神学など、こっそりと集められた本たちです。

ディタの仕事は、本がナチスに見つからないよう隠し持ち、授業の間に先生や子どもたちに回し、一日の終わりには無事に“図書館” (隠し場所)に戻すことです。見つかれば死を免れないであろうアウシュヴィッツの日々の中で、まさに命をかけて守る本の価値が語られます。

この収容所には8冊の本のほかに「生きた本」もありました。それはお話を語ってくれる語り手たちです。中でも人気だったのは、マグダという女性の語るスウェーデンの童話「ニルスの不思議な旅」。子どもたちは何十回でも楽しみました。死と隣り合わせの不自由な日々の中でも、その時だけはニルスと一緒にガチョウの首にしがみついてスウェーデンの空に飛び立ち、広い世界を冒険して回る時間になります。

物語を読むことは想像の世界を主人公と一緒に旅すること、そして本の中にはあらゆる世界が広がっている。私はそれらを体験し、知りたくて本を読みます。

絶望に満ちた過酷な現実の中、たった8冊の本と生きた本(語り手)から語られる物語の世界や知識の世界は、人々の救いとなりました。そんな時代があったことも、本を読むことで知ることができる、という本です。


『風をつかまえた少年―14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった―』

『風をつかまえた少年―14歳だったぼくはたったひとりで風力発電をつくった―』(別ウインドウで開く)

ウィリアム・カムクワンバ、ブライアン・ミーラー/著 田口俊樹/訳 文藝春秋 2010年11月

(文庫版2014年12月)

1冊の本が人生を変える。

舞台は世界最貧国のひとつと言われる、アフリカ大陸南東部の国マラウイ。病気を魔術で治したり、雨を祈りで呼んだりすることが生活に息づいている地域です。

主人公は、マラウイの農家に暮らす14歳の少年ウィリアム。ウィリアムは物を作ったり、機械の仕組みを考えたりするのが好きな少年でした。ラジオを分解したり、空き箱や針金でおもちゃのトラックを作ったり。

2001年、マラウイを大旱魃(だいかんばつ)が襲い、ウィリアムは学費を払えず中学を退学になってしまいます。しかし、NPOが作った小さな図書館で出会った本が、運命を変えます。

何気なく手に取った『エネルギーの利用』という本で彼は風力発電を知ります。当時のマラウイの電気の普及率はたった2%でした。でもこれなら自分にも電気が作れる。生活が楽にできる。

ウィリアムは図書館の本で独学で勉強をし、廃品を利用するなどして試行錯誤の末、ついに自宅の庭に風力発電を作り上げ、家に明かりをともすことに成功します。この風力発電は新聞で話題になり、再び学校に通えるようになったばかりか、高校、大学さらにはアメリカの大学への留学とつながりました。

この本では、ウィリアム少年の軌跡をたどるとともに、マラウイの国について、民族や習慣、文化についても興味深く読むことができます。

 

ふと手に取った本が知らなかったことを教えてくれる、そんな出会いがしたくなります。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。


よむとす No.249 小さな図書館への別ルート