鼎図書館 関口 真紀
なんとなくみんなが認識している「ふつう」「常識」「あたりまえ」の基準、それはどこにあるのでしょうか。あたりまえと思っていたら実は違った、よく見るけど意識していなかった、そういった経験は誰しもあるもの。
その認識の差を面白いと感じることができる本をご紹介します。
『開幕!世界あたりまえ会議 私の「ふつう」は、誰かの「ありえない」』(別ウインドウで開く)
斗鬼正一/著 ワニブックス 2019年2月
書名が気になって手に取ったこの本、自分があたりまえと思っていることが、国や生活文化の違いから認識が違う、その違いを気軽に楽しく知ることができます。
「身長で電車の運賃が決まる」、「指だけでなく全身を使って数を数える」、「緑茶には砂糖とミルクが必須」など、「えぇーっ!ありえない」と思うことが「あたりまえ」と思っている人もいるのですから、人間は面白いものです。
一番印象に残ったのは、「自動化はいらない」のページです。ニュージーランドでは、バスに乗るのに案内放送や時刻表がないどころかバス停に名前がないこともあるそうです。それではたいそう不便だと日本では考えますが、その分運転手に気軽に尋ね、乗客同士気軽に話をするそうです。タクシーも助手席に座って運転手と話をするのが常識とのことで、便利だと会話がなくなり、「不便、面倒と引き換えに人と人とのコミュニケーションに溢れている」という著者のことばには、「便利」ってあたりまえに良いものと思っていたけれど、そうとは限らないのだなと認識を改めました。
『モノのなまえ事典 アレにもコレにも!』(別ウインドウで開く)
杉村喜光/著 ポプラ社 2019年11月
日常的によく見るモノでも案外名前は知らないものです。くつ下を買った時に必ずついている金具、パンの袋を閉じる四角い留め具、ミカンの皮をむくと果肉についている白いすじ、みなさん名前を知っていますか。私は、恥ずかしながら知らないモノばかりでした。常識がない?!いえいえ、あたりまえに見ていても知らないことはあるものです(と思いたい)。
「ねえ、これ知ってる?」とまわりの人とクイズの出し合いをして楽しんでみてください。続編『モノのなまえ事典 まだある!!アレにもコレにも!』(別ウインドウで開く)もあわせてどうぞ。
養老孟司・伊集院光/著 PHP研究所 2020年10月
テレビ出演も多く本も何冊も出されている有名人のお二人の対談本です。「世間からズレる」ということをテーマに話が進んでいきます。二人とも自分は世間からズレていると思っているけれど、立ち位置が違うのが面白いところです。伊集院さんは世間とのズレをなんとか調整しつつ世間という枠の内側にいる状態、養老さんは世間とのズレをあきらめ、外側から冷静に世間を見つめている状態とのことで、世間との「ズレ」がタレント、解剖学者、というそれぞれの仕事の動機になり、努力につながっている、というのがなるほどなと思って読みました。
誰しもみんなと違うと気になるものですが、この本を読むと違っていいんだ、ズレていいのだと気持ちを楽にしてくれます。
「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。
飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。