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よむとす No.233 幸せ、コトリ。

[2020年10月1日]

ID:775

幸せ、コトリ。

中央図書館 森山 ゆり

 

我が家には、一羽のオカメインコがいます。名前はピイちゃん。レモンイエローの体にオレンジ色の丸い模様の頬がとても可愛らしい鳥です。ピイちゃんは家族の行動をよく見て、言葉もよく聞いていていろいろ真似をします。例えば歯磨きをする時のシャカシャカ磨く音、笑い声、咳払いまでも。まるでもう一人人間がいるようです。機嫌がいい時は「ピイちゃんいいこいいこ」と自分を褒めてみたり、放鳥し戻ってきて肩にとまると「ピイちゃんきた!」と自慢気。又、息子が小学校の宿題で県庁所在地を覚えていると、

「ほっかいどー さっぽーろー」と言えるようになってびっくり。こんなに小さな鳥がこれだけのことを覚えて話せるなんてすごい!と感心するばかりです。そしてこの小さな命に毎日家族が癒され、笑顔になり幸せをもらっています。


『小鳥来る日』

『小鳥来る日』(別ウインドウで開く) 平松 洋子/著 毎日新聞社 2013年1月


書名にひかれてつい手に取りました。著者が日常の暮らしの中で起きた些細な出来事や感じたことを綴ってあるエッセイなのですが、なんでもないような日常も、自分の見方や考え方次第で素敵な時間になるものだなと改めて感じた一冊です。

話の中の一つに、靴を履いて歩いているうちに靴下がずり下がってくるという話があるのですが、それを靴下を好んで食べる怪しげな靴の話にしてしまっている、その感性と表現力が私はたまらなく好きで惹かれてしまいます。他にも、『昼下がりはご陽気に』に登場する通称タカナシさんの話や、『やっぱり忘れ物』の修理会社のコンドウさんの話など、それぞれの話に登場する人物が魅力的で、いや魅力的に書かれているというのでしょうか…気付くとにやけてほっこりした気分の自分がいます。著者と同じような経験があると、「あるある!」と思わず頷き、次の話はどんなことに視点を置いてどんな風に感じるのだろうとワクワクし、ユーモアもあり、どこか懐かしい温もりもあるそんな話がたっぷりです。私が何度も読み返したくなるエピソードは、『猫の隊列が通る庭』『くやしい口笛』『消えた片割れ』です。


『にっぽんツバメ便り  ツバメが来た日』

『にっぽんツバメ便り  ツバメが来た日』(別ウインドウで開く) 宮本 桂/写真 ポンプラボ/編集 カンゼン 2018年9月


今年の四月も我が家にツバメがやってきました。ツバメをじっくり見たことはありますか?身近な鳥でありながら私はあまりじっくり見たことがなく、黒と白で喉の辺りが赤いというイメージしかありませんでした。しかし、本で、オスとメスで喉の赤みの濃さが違うことや、背中の光沢も違うことを知りました。また、なぜわざわざ東南アジアから日本へ長旅をしてやってくるのかも…。その理由として有力説は子育てのために必要な餌(虫)がこの時期の日本には豊富だからとのこと。

ツバメの巣は、田んぼから泥やわらを運び、最後に卵を産む産座に枯れ草、鳥の羽、動物の毛など、柔らかく保温性の高い素材を敷くと完成です。私もどんな巣なのかツバメがいない時に、そーっと覗いたことがありますが、ちゃんとフカフカのベッドが出来上がっているのを見ると、我が子のために頑張ったんだなぁと愛おしくなります。卵がかえるまでに二週間。雛が産まれると今度は餌とりと餌やりに追われる日々。産まれたばかりの雛はまるで小さなエイリアンのようですが、あっという間に丸々とした体になり、巣立ちの頃には巣からはみ出て落ちるのではとハラハラします。そして雛たちが無事に巣立っていくとこちらもホッと胸をなでおろす…という毎年です。

そういったツバメの姿を13年間プロカメラマンの宮本桂さんが撮り続け、その未知なる横顔に迫っているのが今回紹介する本です。すごい!こんな瞬間までカメラにおさめられている!という写真も沢山あります。

近年では糞害などによる理由で巣を撤去されてしまったり、農薬被害で数が減少しているようで人間との共生が難しい時代のようです。しかしツバメの初飛来日を記録したり、巣作りから子育てをバックアップするボランティア団体もあることを知りました。

来年の春ツバメがやってくるのを心待ちにしている方、ツバメのことをもっと知りたい方、是非すばらしい写真と共に楽しんでください。ちなみに私は表紙のツバメの凛々しい表情に一瞬で心を奪われました。


『100年たったら』

『100年たったら』(別ウインドウで開く) 石井 睦美/文 あべ 弘士/絵 アリス館 2018年11月


ずっと昔、誰もいなくなった草原にライオンが一頭、草や虫を食べて暮らしていました。「にくにくしいものがくいたい」と思っていたライオンの所に、ある日ぼろぼろの鳥が飛んできます。「わたしはもうとべない。たべたらいいわ。」と言う鳥に、ライオンは少しの間見つめてから「おれはにくはくわない。」と言いました。そんなライオンの優しい気持ちに心打たれ、その日から鳥はライオンと一緒に草原で暮らします。ライオンは鳥に歌を聴かせてもらい、鳥はライオンの温かいたてがみの中で眠ります。

ある月のきれいな夜、「またあえるよ」と別れを告げた鳥に、ライオンはくり返し「いつ?」と尋ねます。「100年たったら。」と答えると鳥は…

それから1年が過ぎ、10年が過ぎ…広い草原にはライオンもいなくなります。そして100年後…ライオンと鳥の約束はどうなったのでしょうか…ゆっくりページをめくりながらじっくりと見て読んで味わってほしい、そんな大きな時の流れをえがいた絵本です。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。