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よむとす No.231 嫌い!を楽しめる本あります

[2020年9月1日]

ID:772

嫌い!を楽しめる本あります

中央図書館 樋本 有希

 

文学や歴史はあまり好きじゃないから図書館にはいかない。化学とかよくわからないから花図鑑以外は理科の本のコーナーには近寄らない。そんなお話をたまにお聞きします。今回はそんな“理系”と“文系”をつなげてくれそうな2冊をご紹介します。


『数学を生んだ父母たちー数論、幾何、代数の誕生』(数学を切りひらいた人びと1)

図書館は本当に幅広いジャンルを扱う場所ですが、どちらかというと文系の人の場所、というイメージが強いようです。実際は何十万冊にも及ぶ蔵書を規則正しく整理したり、検索の仕組みを考えたり、農学・工学の本を扱ったりと理数系の知識があるととても役に立つ場所です。

ところが私は、理数系がとても苦手。特に数学には苦労してきました。でも昔こんなことがありました。高校生の時。授業が本当に苦しくて、逃避からかちょっと眠たくもなってきた時、先生がこんなことを言ったのです。

「このガロアっていう人はすごい人だったのだけど、20歳で決闘で死んじゃうんです」。

パアッと目が覚めました。数学者が決闘!何事だ!文学好き、歴史好きな私はガロアについて調べまくりました。どんな人かはわかって面白かったですが、今でもガロア理論ってよくわかりません。ただこれをきっかけに、科学者の伝記というものが、いつの間にか好きなジャンルになりました。

『数学を切りひらいた人びと』シリーズは数学者50人の代表的な功績・理論とその人生を紹介する伝記です。数式の解説などは難しいので、正直読み飛ばしてしまいもします。でも例えば1巻に出てくるピタゴラスですと、ピタゴラスが自分の考えを伝えるためにつくった学校の仕組みであるとか、その時代に数学が他のどんな学問とつながっていたかなどの話は、歴史好きな人にもとても興味深い部分があります。フェルマーやポアンカレなど「聞いたことはあるけれど」、という人物も出てきますし、文章もわかりやすいので、「たまには読んでみようか」というときにぴったりです。

(もしガロアについて気になった方は『青春のガロア』(別ウインドウで開く) A・ダルマス/著 東京図書 をおすすめします)。



『酸素の物語』(化学の物語1)

『酸素の物語』(化学の物語1)(別ウインドウで開く)

カレン・フィッツジェラルド/著 大月書店 2006年6月


化学も本当に苦手でした。ベンゼン環ですとか結局わからないまま。ところが図書館で検索の練習をしたとき「化学式で検索する」という項目がありました。気絶するかと思いました。それでもそういう人でも楽しめる化学の本ってちゃんとあるのです。

『酸素の物語』。目に見えないけど私たちの周りにいつもある酸素というものに人はどうやって気がつき、どう理解したのでしょうか?「空気」と「酸素」はどうやって区別されたのでしょうか?17世紀に火と空気の関係から酸素の存在に気が付き始めたのに、18世紀になって迷走したりしながら、ついに酸素は「人体にとって不可欠な存在である!」と気が付くまでを紹介した1冊です。

これは実験の本ではなく炭素・窒素などの物質が発見されるまでの過程や、その後の利用などについて書かれた歴史物語のシリーズの中の1冊です。理科好き・歴史嫌いの方にも、理科嫌い・歴史好きの方にも楽しんでいただけると思います。またシリーズ中の『金の物語』(別ウインドウで開く)はまるでファンタジーのような部分も。ゲームが好きなお子さんと一緒に読むと面白いかもしれません。

 

理科が嫌いな人、数学が嫌いな人、歴史があまりよくわからない人、物語(作り物のお話)が嫌いな人。人にはそれぞれ好き嫌いがあります。でも科学の発達には多くの人が関わっていて、政治や芸術とも無関係ではなさそうです。歴史の大事件には、感染症であるとか自然災害も大きくかかわります。だれがどんな科学技術を持っているか、で国の主が変わったりもします。

「文系だ」「理系だ」を越えて、「難しい数式」「ミミズのような古文書」の壁を越えて。「嫌い」の壁を越えて、好奇心を刺激してくれる本たちにぜひご注目ください!


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。