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よむとす No.228 上郷出身 梓林太郎の世界

[2020年7月15日]

ID:765

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上郷出身 梓林太郎の世界

上郷図書館 宮下 裕司

 

山岳ミステリーの第一人者といわれる作家の梓林太郎先生が上郷のご出身であることをご存じでしょうか。登山経験を生かした山岳ミステリーを中心に、長野県警の人情刑事「道原伝吉シリーズ」や旅行作家の「茶屋次郎シリーズ」など数多くの作品を発表し、80歳を超えた今でも現役の作家として、精力的な執筆を重ねていらっしゃいます。

また、梓先生は新刊を発行されるたびに図書館へ寄贈してくださり、飯田市の図書館で所蔵している先生の著作は250作以上にのぼります。(再刊、文庫化含む2020年7月現在)今回は、作家生活40周年を迎えられた梓林太郎先生の作品をご紹介します。


『木曽川哀しみの殺人連鎖』

『木曽川哀しみの殺人連鎖』(別ウインドウで開く)

梓 林太郎/著 祥伝社 2019年11月


テレビの2時間サスペンスでもおなじみの旅行作家・茶屋次郎シリーズの最新作。作家の茶屋次郎が日本各地の名川を訪ね、そこで数々の事件に遭遇します。

発端は、東京銀座の百貨店で起こった高級腕時計の盗難事件でした。茶屋のもとへ犯人に疑われた女性従業員が相談にやってきますが、彼女には出生にまつわる悲しい過去がありました。やがて、百貨店で腕時計盗難の社内調査を担当していた男性が、木曽路で他殺体となって発見されます。週刊誌の連載「名川シリーズ」の取材を兼ねて、茶屋が木曽川へやってくると第2の殺人事件が起こります…。

梓先生が、地元信州を舞台に描く旅情ミステリー。物語の終盤には飯田も出てきます。


『九月の渓で 自選傑作短編集』

梓先生の作家デビューは昭和55年(1980年)、47歳の時でした。デビュー作は、小説宝石・エンタテイメント小説大賞を受賞した短編「九月の渓で」です。

主人公の鵜ノ木は、四十半ばを過ぎても毎年2回以上は登山を続けている山男でした。北アルプスにまだ雪が残る6月、上高地から横尾までやってきた鵜ノ木は、山荘で知り合った若者と成り行きで蝶ヶ岳を目指すことに。しかし、天候が急変し、二人は遭難してしまいます…。極限的な状況で、人間の自我が交錯する臨場感にあふれた作品です。

この本は、デビュー作を含めた6つの短編集になっており、いずれの作品も読み応えがあって、おすすめです。


『霧の中の巨人 回想・私の松本清張』

梓先生は20歳で上京され、セールスマン、調査会社、コンサルタント会社などのさまざまな職業を経て、作家になられました。この本は、主にコンサルタント会社に勤めていた時代の大作家松本清張との交流を記した自伝的作品です。松本清張は、職業柄、社会事情に詳しかった林さん(梓先生の本名)から会社経営の裏側などを聞いて、作品のヒントを得ていたそうです。この回想録では、巨人松本清張との数々のエピソードの他に、梓先生の作家以前の決して平坦ではなかった半生を知ることができます。昭和30年代から50年代にかけての高度経済成長の真っただ中、日の当たる話ばかりではなく、昭和の影の部分ともいえるような暮らしぶりを振り返るところは、胸がつまります。

 

この他にも、梓先生の上郷村で過ごした幼少期の思い出が記された本に 『私だけのふるさと 作家たちの原風景』(別ウインドウで開く) (岩波書店2013年)と『ぺったんおしなご海ゆかば 子どもたちの上郷国民学校』(別ウインドウで開く) (績文堂出版1995年)があります。こちらも、ぜひご覧ください。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。


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