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よむとす No.226 リュックの中から広がる世界

[2020年6月15日]

ID:755

リュックの中から広がる世界

中央図書館 矢澤 恵

 

リュックの中には○○○が ひとつ、リュックを たたくと○○○は ふたつ。

今日はなにが出てくるかな。


『いい感じの石ころを拾いに』

『いい感じの石ころを拾いに』(別ウインドウで開く) 

宮田 珠己/著 河出書房新社 2014年5月


息子のリュックの中から石が出てきた。20個ぐらい。保育園の年少のころ。

「どうしたの、これ?」「ほいくえんのお庭でひろったの」と嬉しそう。

その後、見つけたのがこの本です。旅行エッセイストの宮田珠己さんが、日本中の海岸に「いい感じの」石を拾いに行くという本。息子だけでなく私もつい石を拾ってしまうのですが、この「いい感じの」という感覚が私の気持ちにぴったりはまりました。

宮田さんにとっての「いい石」とは、色だったり形だったり、手に取ってみた触り心地だったり、拾ってみたらなんとなくしっくりくる石というもの。説明できなくても、なんかいいんだよね、という自由さがあります。この本でも、何人もの仲間たちと拾いに行ったり、コレクターを訪ねたりもしますが、「いい感じ」は人それぞれ。そんな個性も楽しい本です。

息子が保育園から拾ってきた石は、彼にとって「いい感じの」石だったんだろうな。

宮田さんを見習って、自分にとっての「いい感じの」なにかを見つけにのんびりお散歩にでかけてみませんか。


『中国の遊印』

『中国の遊印』(別ウインドウで開く) 

高畑 常信/著 木耳社 1983年7月


息子のリュックの中から落款が出てきた。中学三年生のころ。美術の授業で作ったとのこと。

その後、目に留まったのがこの本です。落款って名前や号だけだと思っていましたが、「こんなに楽しいものがあるのか」「こんなに自由でいいのか」と驚きました。

「遊印(ゆういん)」とは、自分の思想や好きな言葉、はたまた生活の様子(悠々自適とか、田舎暮らしとか)などを印にしたものです。

例えば、表紙にある丸い印は「延年益寿(えんねんえきじゅ)」いつまでも長生きするという意味のおめでたい言葉。その下の印は「逍遥遊(しょうようゆう)」何ものにもとらわれずに飛翔するという言葉で、自由な世界を表現したもの。長い言葉のものもあり「人生識字憂患始」というものは、人生は字を知り書を読むことで知識を広め探求して高い境地に立つことができるが、反面、新しい事実を知ることで新たな苦しみもある、というもの。

著者の高畑さんは「この小さな空間の中に、無限の宇宙がある」といいます。使われている言葉の背景や篆刻家の人生観・芸術観・思想についての解説もあります。

印象に残ったものをもうひとつ。「春蚓秋蛇(しゅんいんしゅうだ)」という印です。春の蚓(ミミズ)と秋の蛇。つまり、字が汚いということ。どんな書や画に押したんだろうと考えてしまいませんか。

姉妹編に 『日本の遊印』(別ウインドウで開く) という本もあります。日本では江戸時代にたくさん作られたようです。


『メディア工作ワークブック』

『メディア工作ワークブック』(別ウインドウで開く) 

パンタグラフ/著 グラフィック社 2017年4月


息子のリュックの中からパラパラ絵本が出てきた。旅先の美術館で購入。

その後、手に取ったのがこの本。パラパラ絵本やコマ撮りアニメ、回転のぞき絵(ゾートロープ)など動いてないのに動いてみえるものの仕組みの解説と、作り方の本です。著者は立体造形のクリエイティブユニット「パンタグラフ」というグループ(絵本作家のヨシタケシンスケさんも所属していました)。

静止画の連続が動いて見えることを仮現運動というそうですが、脳が絵と絵の間を補完してしまうのですね。気楽に楽しんでいたパラパラ絵本もよく考えると不思議です。

この本では、作り方がていねいに描かれていますが、どんな風に見えるかはインターネットで見ることができます。その動きの不思議さ、クオリティの高さは一見の価値があります。

もう1冊、同じパンタグラフの 『造形工作アイデアノート』(別ウインドウで開く) という本も併せて楽しめる本です。作りたいものがあったとき、構想に合うにはどんな素材でどんな風に作ればいいのか、作り方が説明されています。お店のディスプレイや建築模型、高校の文化祭の造形物などにも、もちろん親子の工作にも役に立ちそうです。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。