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よむとす No.217 作家に出会えるキセキを

[2020年2月1日]

ID:727

作家に出会えるキセキを

中央図書館 木下 陽子

 

時々カウンターで、「おすすめの作家いませんか?」と尋ねて下さる方がいらっしゃいます。そこで、今回のよむとすは、私自身がお気に入りの作家に出会えた軌跡を、また、作家について書かれた本に出会えた奇跡を、それらの本と共にご紹介したいと思います。


『作家の猫』

『作家の猫』(別ウインドウで開く)

コロナ・ブックス編集部/編 平凡社 2006年6月


ある日、中央図書館の食べ物エッセイの書棚で、 『作家の食卓』(別ウインドウで開く) 『作家のおやつ』(別ウインドウで開く) 『作家の酒』(別ウインドウで開く) という本に出会いました。そして、この「作家の…」シリーズに、猫好きにはたまらない 『作家の猫』 があることを知り、所蔵先の上郷図書館から取り寄せて借りてみました。

この本は、他のシリーズ本同様、作家と表題のテーマ(今回は猫)にまつわる話や写真が掲載されています。例えば、椋鳩十が書いた 『モモちゃんとあかね』(別ウインドウで開く) は、ほとんどが実話で、娘さんと飼い猫への愛情を込めて書いたものであること、あの夏目漱石や宮沢賢治が、実は、猫が嫌いだったということ等々。また、猫が登場する名作の紹介もあり、この1冊で、多くの作家と猫に出会うことができます。かく言う私も、この本で、室生犀星と愛猫ジイノの心温まるエピソードに出会い、写真の中の犀星がジイノに向けている優しい眼差しが心に残り、犀星の本を読み始めました。

そんな時に出会えたのが、次の本です。


『我が愛する詩人の伝記』

『我が愛する詩人の伝記』(別ウインドウで開く)

室生 犀星/著 講談社 2016年8月



この本を歌手の米津玄師さんの公式ツイッターで見かけた時、「犀星だ!」と心が躍りました。調べてみると、この本は、犀星が親交のあった詩人11人の姿を書いたものだということが分かりました。その中の一人に高村光太郎がいることも分かり、米津さんが歌った「Lemon」の歌詞から光太郎の詩「レモン哀歌」を思い浮かべていた私は、この本にその詩についても書いてあったら嬉しいなという想いから手に取ってみました。

目次で高村光太郎を見つけ、光太郎の最初のページに進み、早速、詩「レモン哀歌」が載っているかを探そうとして手が止まりました。なぜなら、本文の冒頭が「高村光太郎の伝記を書くことは、私にとって不倖な執筆の時間を続けることで、」と始まったからです。

あれ?この本は、ただ単に犀星が愛する詩人について書いたものではないのかな?と思い、読み進めました。犀星が光太郎に対し妬み敬い怯えていたこと、そんな光太郎と初めて出会った日のこと、犀星の視線で映し出される繊細で鮮明な光太郎や周りの人たちとの日常のこと、また、そこから生まれたであろう詩を、一気に読み終えました。

犀星の想いが赤裸々に綴られているこの本は、犀星その人の伝記でもあるのではと思い、光太郎の章だけでなく全てを読みました。その結果、犀星と親交のあった詩人11人の中の一人、釈迢空こと折口信夫へと私を導いてくれた本にもなりました。

なお、詩「レモン哀歌」がこの本に載っていたかどうか気になる方は、ぜひ、ご自身で読んでご確認くださいませ。


『ムーミンパパの名言集』

『ムーミンパパの名言集』(別ウインドウで開く)

トーベ・ヤンソン/文・絵 サミ・マリラ/編 渡部 翠/訳

講談社 2010年9月


ムーミンパパは、フィンランドの作家トーベ・ヤンソンが書いた童話ムーミンシリーズの登場人物です。ムーミンパパは、子どもの頃、とある事情から冒険家になります。そして、仲間との大冒険の途中でムーミンママに出会い、その後、家族のためにムーミン屋敷を建設し、屋根裏にある書斎で執筆活動をしているのです。

そんなパパの想いが言葉となったもので構成されているのが、この本です。パパの真実、孤独、友情など、テーマごとに選りすぐりの言葉が並んでいて、共感したり、気づかされたり。まるで、パパと対話している気分になります。また、記されているそれらの言葉一つひとつに、ムーミンシリーズのどの本のどこに掲載されているかが添えられているため、気になった言葉が、物語のどんな場面でのパパの想いなのかを辿ることも可能です。

なお、パパの作品にご興味がある方は、 『ムーミンパパの思い出』(別ウインドウで開く) の中にパパによる自叙伝があるので、そちらもどうぞ。



以上、みなさんがお気に入りの作家と出会えますよう願いを込めて、ご参考まで。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。