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よむとす No.216 瞬間

[2020年1月15日]

ID:725

瞬間

鼎図書館 林 聖子

 

私たちが生きる現代社会はさまざまな物事が刻々と変化しています。忙しい毎日のなか、ふとその変化に目を向けてみると新しい発見があるかもしれません。日々何気なく過ぎていく瞬間に目を向けてみませんか。



『海馬 脳は疲れない』

『海馬 脳は疲れない』(別ウインドウで開く)

池谷 裕二/著 糸井 重里/著 朝日出版社 2002年6月


「海馬」ということばから、なんだか難しい内容なのかなぁという印象を持たれるかもしれません。東京大学大学院の池谷教授と広告コピーなどを手掛ける糸井さんの対談形式で、脳科学についてとても読みやすく書かれています。例えば池谷教授によると「高校生ぐらいの頃に突然背がとまって、その頃から、論理的思考がだんだん発達していきますが、ただ、その時点では論理的な思考が未熟です。実生活に結びつけた論理的な思考は、30歳を超えてから伸びる。」だそうです。30歳まではたくさんのことに挑戦してさまざまな失敗をしておけば、身の回りにある物事にはつながりがあると分かってくるそうです。私は30歳までの間にたくさん失敗しても落ち込まなくてもよいのだと安心しました。糸井さんは池谷教授の話を聞いて「30歳の誕生日に何をしているかでその人の人生が決まる」と話しています。

私は糸井さんの言葉を知ってから自分の誕生日をどう過ごすかを毎年考えるようになりました。30歳をこれから迎える方、もうすでに迎えてしまった方でも次の節目の誕生日をどのように過ごすかを改めて考えてみてみるのもいいかもしれないですね。


『ぼくらはその日まで』

『ぼくらはその日まで』(別ウインドウで開く)

小嶋 陽太郎/著 ポプラ社 2017年8月


物語の主人公は中学2年生の男の子のサク、ハセ、女の子のチカ。仲良し3人組は長谷川調査隊を結成し、迷いネコの捜索などの活動をしていました。夏休みにハセのおばさんが住む田舎に3人は調査隊の夏合宿をしに行きます。そこで、女子高校生の桐子さんに出会います。3人と桐子さんは毎日のように会って地元の小学生と遊んだり、地域の夏祭りに参加していました。桐子さんは3人とそうした日々を過ごしている間に幼い頃に体験したあるできごとを話します。その話を聞いた瞬間、ハセの思い出もフラッシュバックして…。幼い頃、ハセと桐子さんはすでに出会っており、桐子さんは小さい頃のハセの言葉に勇気づけられて、ずっとそのできごとを忘れずに過ごしていたのでした。

私はこの物語を読んで小学生の頃に始めた書道でなかなか昇段することができず、その現実を上手く受け入れることができなかった過去を思い出しました。昇段できない、その状況が嫌だからという理由で教室を休むことはせず、先生のアドバイスを聞いてただひたすら練習したら、ある日突然昇段することができました。上手くいかないことがあっても、めげることなく取り組めるようになった今の自分をその当時のできごとが支えているのではないかと思う時があります。みなさんは子どもの頃を振り返って今の自分を支えているできごとはありますか。


『14歳のための時間論』

『14歳のための時間論』(別ウインドウで開く)

佐治 晴夫/著 春秋社 2012年1月


私たちは時計を確認することによって時間の経過を感じ取れるだけではなく、自分たちの身近なできごとからでも時間が流れていると感じられるのではないでしょうか。例えば、ついこの間生まれたと思った赤ちゃんがハイハイやつかまり立ちができるようになった様子を見て、あっという間に時間が過ぎたなぁ、と感じます。

この本は2011年に出版された『14歳のための物理学』(別ウインドウで開く)の姉妹本として刊行されました。「原子」や「分子」といった用語が使用されているので、理科系が苦手な方にとっては一見敬遠しがちな本かもしれませんが、音楽的な視点からも時間について触れられているので、理科系が苦手な方でも手に取りやすい本かと思います。どうして、「昨日」や「今日」、「明日」を理解することができるのか、時間は今という瞬間の連続なのか等の内容に触れられており、私たちが感じ取れる時間についてこの本を通して考えることができます。著者は本のなかで「「これから」が「これまで」を決める」と記しています。今、この瞬間のあなたが「これまで」のあなたを左右するということです。著者のことばの意味が気になった方はぜひ、図書館で借りて読んでみてください。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。