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よむとす No.182 生物学者って…

[2018年8月15日]

ID:577

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生物学者って…

中央図書館 瀧本明子

生物学者という方たちの研究対象に対する愛情ときたら、大概どの著書を読んでも、文章から“あふれ出ている”では足らず“ほとばしりでている”と表現したほうがぴったりというものばかりですが、今回はそんな中の新刊とロングセラーを1冊ずつご紹介します。


『蜂と蟻に刺されてみた-「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ-』

『蜂と蟻に刺されてみた-「痛さ」からわかった毒針昆虫のヒミツ-』 (別ウインドウで開く)

ジャスティン・O・シュミット/著 今西康子/訳 白揚社 2018年6月


毎年どこかでだれかが蜂に刺されたとニュースで取り上げられますが、刺されて痛かったり毒があるのはメスだけだということをご存知でしたか?オスは刺すような恰好をして脅かすだけで、刺針も毒液も持っていないのだそうです。

蜂や蟻の生態を書いた本は他にもありますが、この本の面白いところは、まるで物語のように蜂や蟻に刺されたときの状況が語られ、とにかく「痛み」のレベルを追求しているところ。著者は自分が刺されたり、誰かに刺されてもらったり(!)して、その痛さや毒性の強さ弱さ、痛みの正体は何なのかを探っています。幼い頃に度胸試しで蟻塚の上に座ったことをはじめとして、大学生の時に大量のヒアリに刺されたことなどなど、100種類以上の昆虫に刺されたとか。著者のユニークな研究は、2015年にイグ・ノーベル賞を受賞しました。

巻末近くに「毒針をもつ昆虫に刺されたときの痛さ一覧」がついていて、蜂や蟻に刺されたときの痛さのレベルと刺されたときの「感じ」がかかれています。この表現が生物学者のそれとは思えないような面白い表現(例えば、ある蜂は「お尻をエアガンゲームの標的にされてしまって、BB弾が何発も命中した感じ」とのこと)なので、この部分だけでも読んでみることをお勧めします。

ちなみに、わが家にもつい先日蜂に刺されて指を腫らしている人がいたので、刺されたときの痛みを表現してと言ってみました。「10分間はとにかく痛い」ふむふむどんなふうに?「あと、もしひとつチクっと刺されたら何もかも放り出して急いでその場から逃げる」-あのそれ、大事なことだとは思いますが、痛みの表現ではありません…。


『ソロモンの指環-動物行動学入門-』

『ソロモンの指環-動物行動学入門-』(別ウインドウで開く) 

コンラート・ローレンツ/著 日高敏隆/訳 早川書房 2006年6月


もうずいぶん前のことになりますが、こんなことがありました。常連の若い利用者の方がある百科事典を持ってきて、「この二人のローレンツ(コンラート・ローレンツとヘンドリック・ローレンツ)は写真が入れ替わっている」というのです。出版社にこのことを問い合わせると、果たしてその通りでした。

ローレンツの研究でよく知られているのは「刷り込み」です。ガチョウのお腹の下で孵化したガンのヒナはガチョウについて歩いたが、孵卵器で生まれたローレンツが真っ先に話しかけたガンは、ローレンツを親だと思ったのかそれからずっとついて歩くようになった。ヒナは生まれて初めて目の前で動き話すものを親だと思うというあの「刷り込み」。この話を聞いて、いったい世界中のどのくらいの少年少女が、生まれたばかりのヒナに一番最初に会いたいと思ったことか。私もそのひとりですが、未だ実現していません…。

今回この本を読み返してみると、ついて歩かれるのも魅力ですが、ヒナが卵から生まれる時の様子が本当に丁寧に描写されていて、毛が濡れている様子、その毛が乾いていく様子、ものを見る様子、まるで目に見えるようです。「旧約聖書に登場するソロモン王は、魔法の指環の力でけものや鳥や魚などと語ったといいいうが、私は魔法の指環などなくても、自分のよく知っている動物となら話ができる」というローレンツが、いかによく生き物を見ていたかがわかります。お父さんお母さん、保育園の先生など、子どもと一緒に生き物をみる方にも読んでいただくといいんじゃないかなあと思いました。

この『ソロモンの指環』が日本で最初に出版されたのは1963年。それから何回か改版され出版され続けてきました。ローレンツが「種の維持のため」と説いた動物行動学は、「個体のためのもの」と学説は大きく変わったといいますが、生きものに対する愛情は、変わらず“ほとばしり”出続けています。著者自身の手による挿絵も一見の価値あり!


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。


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