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よむとす No.165 本にまつわるアラカルト

[2017年12月1日]

ID:457

本にまつわるアラカルト

上郷図書館 今村 洋子

 あなたにとって本とは何ですか? 暇つぶし、友人、それとも羅針盤?
今回は、本や図書館をテーマにした小説をご紹介します。ちなみに、かのフランツ・カフカはこう言っています。
「本とは、ぼくらの内の氷結した海を砕く斧でなければならない」


『本を守ろうとする猫の話』

『本を守ろうとする猫の話』(別ウインドウで開く)

夏川草介/著  小学館  2017年2月

『神様のカルテ』の著者、夏川草介さんによるファンタジー小説。
古本屋を営む祖父と二人で暮らしていた高校生、夏木林太郎。物語はその祖父が突然、亡くなるところから始まります。やむをえず林太郎は古本屋をたたむことに。そこに現れたのは、言葉を話す不思議な猫。猫は林太郎を三つの迷宮に導きます。そこで彼が出会ったのは、本の宿敵の三つのタイプの人間でした。林太郎は彼らと武力でなく対話で、本から得た言葉の力を使って戦います。
本を愛する老若男女にささげるファンタジー。林太郎の祖父の言葉が印象的です。
「時代を超えてきた古い書物には、それだけ大きな力がある。力のあるたくさんの物語を読めば、お前はたくさんの心強い友人を得ることになる」


『図書館は逃走中』

『図書館は逃走中』(別ウインドウで開く)

ディヴィッド・ホワイトハウス/著  早川書房  2017年5月

この本には、移動図書館が登場します。移動図書館とは、車内が図書館になっている自動車で、図書館が利用しにくい地域を巡回します。そんな移動図書館が、なんとパトカーから逃走する物語です。
母親が家出をし、父親と二人で暮らす少年ボビー。彼は家では父親から無視されて、学校ではいじめられていました。そんな彼を救ったのは、移動図書館で清掃をしている女性と、その娘。彼は移動図書館にやっと自分の居場所を見つけ、ささやかな幸せを感じはじめますが…。やがて事件が発生し、彼らは移動図書館もろとも逃亡の身の上に。ボビー達の運命はいかに。


『バルザックと小さな中国のお針子』

『バルザックと小さな中国のお針子』(別ウインドウで開く)

ダイ・シージエ/著  早川書房  2002年3月

書物が禁じられ、多くの知識人が命を落とした文革時代の中国が舞台の小説。本と自由を愛する青年たちのラブストーリーです。知識人の息子であるがゆえに、主人公は農村に送られ、肉体労働を強いられます。「再教育プログラム」の一貫として。
そこでは学問が禁じられ、悶々とした日々を送るなかで、主人公は禁断の書物(西欧の小説)を手に入れます。
バルザック、ヴィクトル・ユゴー、スタンダール、デュマ…。彼は「目がくらみそうに」なり、ふるえるその手で作品を手に取るのです。
そして、主人公の友人は、恋する女性に禁書であるバルザックの小説を朗読しはじめますが…。
文学作品を愛する全ての人が共感できる物語です。本が自由に読める日常生活のありがたさがしみじみとわかります。


よむとす

「よむとす」とは“読む“と“~せむとす”(ムトス)を合わせた造語です。

飯田市におけるムトスの精神を生かし、読むことにかかわる活動の推進と支援を目的とした読書活動推進の合言葉です。